2008年04月21日(月) 12時00分
米国化学会で発表された、印象的な化学研究トップ5(WIRED VISION)
やわらかく崩れやすいメキシコのフレッシュチーズやホリスティック医療が、学術研究の対象になるとは思えないかもしれない。だが、広大な化学の世界では、どちらもなんとか自分の居場所を見つけている。
4月6〜10日(米国時間)、数千人の化学者が、米国化学会の学会のためにニューオリンズのMorial Convention Centerに集まった。
無数の命を救える可能性のある発明を披露している化学者もいれば、あらゆるものごとを科学調査のレンズを通して見る方法についてユニークな話をしている化学者もいた。
われわれは、ナノテクノロジーについての話をじっくり聞いたり、おびただしい数のポスターセッションをあちこち見て回ったりしたが、ここでは大いに興味をそそられるプレゼンテーションを集めみてみた。
第5位:グリーン化学
いつの日か、ソフトシェル素材のおしゃれなジャケットが、このフラスコの中にある真っ青な液体から作られるかもしれない。
60年以上もの間、ナイロンの合成原料は2段階の化学プロセスを経て生成されているが、その過程で大量の廃棄物が発生している。この問題を改善するため、ジョージア南大学のShannon Davis博士とその学生たちは、原料の1つであるアジピン酸を地球に優しい方法で生成する方法をさまざまにテストしている。
触媒、酵素、または銅をゼオライトと呼ばれるスポンジ構造のセラミック上で使用することによって、製造過程における化学反応を、今よりクリーンで効率的なものに置き換えたいとDavis博士は考えている。
これはグリーン化学と呼ばれており、幸運にも今や大きなトレンドとなっている。今回、Davis博士と学生のChristopher Riley氏は、シクロヘキサン、過酸化水素、それに銅触媒を組み合わせ、ナイロンを作るための原料となる化学物質を生成した。
第4位:ニガウリでマラリア退治
植物は、驚くほどさまざまな種類の有用な化学物質を作り出す。だが、科学者が、その物質をすべて分類調査し新しい薬物を見つけ出せるという状況に達するのは、まだまだ遠い話だ。
ポートランド大学では、Angela Hoffman准教授とその学生らが、マラリアに効く薬の研究で、膨大な数の天然物質をくまなく調べるという賞賛すべき努力を続けている。
マラリアは、熱帯熱マラリア原虫などの寄生虫によって引き起こされ、恐ろしいことに発展途上国ではごく普通に見られる病気だ。こうした寄生虫に、ニガウリ[別名、ツルレイシ、ゴーヤー]は毒薬となる。
Hoffman博士と、学生のThuy-Tien Pham氏およびThanh Tam Hoang氏は、ニガウリが作り出す化学物質によって、人を死に至らしめる寄生虫を殺せることを発見した。しかも、マラリアの標準的な治療薬として用いられるクロロキンに耐性を持っている寄生虫にも有効だ。
現在は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使って、ニガウリから複数の化学物質を分離し、それぞれの化学物質をテストしている。Hoffman博士たちはこの研究から、マラリアとの戦いにおける新兵器が見つかることを期待している。
第3位:ウイルスを取り除くフィルター
清潔な飲料水が手に入らない数十億もの人々を救うために、『Segway』の発明で有名なDean Kamen氏を始めとして多くの発明家がさまざまな方法を開発(日本語版記事)している。だがそういった方法は、通常非常にコストがかかる。
イリノイ大学の大学院生、Xuan Li氏は、安価な新方式を考案した。ガラス繊維と酸化鉄ナノ粒子を同時に利用することで、水に含まれる最も危険な汚染物質であるウイルスとヒ素を取り除くフィルターとして機能させられる、というものだ。
Li氏は、同大学のJames Economy博士の指導の下で、ウイルスが、静電力によって酸化鉄ナノ粒子に捕獲されることを発見した。つまり、ナノ粒子は正の電荷を帯び、一部のウイルス粒子は負の電荷を帯びているため、互いにくっつくというわけだ。(注記:実を言えば、筆者は7年前、Economy博士の助手を務めていた)
(2)へ続く
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080421-00000004-wvn-sci