世界有数の電気街を抱え、オタクの聖地としても知られる東京・秋葉原で、休日に実施される歩行者天国をめぐって騒動が起きている。女性の過激なパフォーマンスが一部で常態化しているためだ。警察官の見回りだけでは限界があるとして、大型連休に初めて警察や行政、地元商店街など町ぐるみで大規模なパトロールに乗り出すことになった。
男性の写真撮影に応じる女性パフォーマー=東京・秋葉原、写真の一部を修整しています
メード服の女性を撮影する男性たち=東京・秋葉原、写真の一部を修整しています
13日午後。歩行者天国のあちこちで人だかりが出来ていた。メードや女子高生の制服姿の女性や、下着が見えそうなほどのミニスカートの女性歌手を、カメラを構えた男性が取り囲む。
「路上ライブなど人寄せ行為は禁止」。警視庁万世橋署などが立てた看板の隣で、堂々とパフォーマンスを続ける人も。「店の前だから、やめて」と電器店員が注意しに来た。
「警察が来るよ。逃げて」。どこからか情報をつかんだ中年男性が叫ぶと、さっさと場所を移してしまった。毎週、警察官6人が見回りをしているが、いたちごっこが続く。
秋葉原で歩行者天国が始まったのは35年前。銀座や新宿などとほぼ同じころだ。それが3年ほど前から、メード喫茶店員がカメラに向かってポーズをとったり、路上ライブをしたりする人が増え、昨年ごろから一部で過激さを増していったという。
万世橋署幹部や商店街関係者は「アキバのオタク文化が注目されるようになった時期と重なる」とみる。署や千代田区には、「路上ライブの騒音がうるさい」「子どもを連れて歩けない」といった苦情が急増した。
署によると、歩行者天国でのパフォーマンスも道路交通法違反(無許可使用)などに抵触しかねないが、摘発はまだないという。幹部は「警察だけでは人員に限界がある。『無法地帯』がこれ以上広がれば、何のための歩行者天国かわからなくなる」と、歩行者天国廃止の可能性まで示唆する。
秋葉原駅周辺は近年、高層マンションやビルの開発が進み、つくばエクスプレスの駅も出来て注目を浴びている。同署が区や地元商店街に協力を求めたところ、「街のイメージダウンは避けなければ」との考えで一致。歩行者天国が連日続く大型連休に関係者が集まってパトロールすることを決めた。ただ、歩行者天国の廃止には今のところ慎重な声が多いようだ。
49社が加盟する「秋葉原電気街振興会」の小野一志会長(オノデン社長)は「安心して買い物できるように、お互いの気遣いが大事。オタクもパフォーマーも集まる街の面白さは残しながら、ルールを作って自主規制を呼びかけるべきだ」と話している。(渡辺丘) アサヒ・コムトップへ