【ニューデリー=小暮哲夫】世界最多の亡命チベット人約10万人が暮らすインドの首都ニューデリーで17日、北京五輪の聖火リレーがあった。数千人が抗議の座り込みをしたが政府が厳重な警備で抑え込み、大きな混乱はなかった。国境問題を抱える隣国中国に対する、インド政府の配慮がうかがえる。
ニューデリーで17日、聖火リレーに近づこうとして警察に連行されるチベット人=AP
コースは、市内中心部の大統領官邸からインド門まで続く直線の大通り。当初は9キロ走る予定だったが2キロに短縮、政府は周辺道路をバリケードで封鎖して治安要員1万5千人を配置した。リレーの開始時間も、この日朝まで報道陣に明らかにしない徹底ぶりだった。
聖火リレーの前には、亡命チベット人ら数百人が聖火に模したトーチを掲げ、数千人が座り込みをする中心部の公園までの数キロをデモ行進。参加者らは口々に「インドはチベット人を支援すべきだ」と声を上げた。AFP通信によると、警察は周辺で活動家180人の身柄を拘束した。
インド政府は59年のチベット動乱以降、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世を受け入れ、北部ダラムサラに亡命政府の設置も認めてきた。入植地も提供。インドに感謝し「第二の故郷」と呼ぶ人も少なくない。
一方で、インド政府は「反中国の政治活動は認めない」として、過激な抗議行動を取り締まってきた。
亡命チベット人のテンジンさん(28)は「インドは中国を喜ばせようとしすぎだ。我々に政治活動の自由を与えて欲しい」と、今回の抗議抑え込みに失望を隠さない。
現地の有名スポーツ選手や俳優ら計70人がつないだインドの聖火リレー。サッカー代表主将や女優ら一部の市民は、中国への抗議を示唆して参加を辞退したが、多くは「チベット問題と五輪は別の話」として参加した。 アサヒ・コムトップへ
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