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2008年04月17日(木) 17時21分

本間俊典コラム〜「霞が関の埋蔵金」はここにあったオーマイニュース

 今の勤務先が東京・新宿南口にある。高層ビル街のサラリーマンや、中国などからの外国人買い物ツアー客(家電店が多いため)、新宿御苑の散策の皆さん(今は遅咲き桜の見物客で超満員)などでごった返す。

 それはともかく、それほど人通りの多い界隈にもかかわらず、新宿御苑の入り口手前にある「東京道の情報館」には誰も気にとめない。御苑に行くついでにのぞいたら、3月中旬、「当面の間、閉館」の張り紙が出ていた。

 「展示・情報提供等のあり方を改めて検討することにしました」

 ここも道路特定財源で建設された施設だったのだ。

 揮発油税(ガソリン税)の暫定税率が3月いっぱいで切れたため、ガソリンスタンドの価格が1リットルあたり23円前後安くなった。これを見越したドライバーらが3月の買い控えから4月に入ると一斉に“まとめ買い”に走り、中にはポリタンクに入れて買いだめしようとする人まで現れた。これは危険なので法律で禁止されている。

 消費者行動をこれほど鮮明に露出させた政策(というか、ねじれ国会が生んだ産物だが)も、最近では珍しい。

 おまけに、国土交通省がこの財源にたかって、使い放題していた事実も明らかになった。マイカー所有者の1人として、ここは民主党の努力に敬意を表したい。

 消費者がこれほど敏感に反応したのは、昨年来の諸物価値上がりが背景にあることは間違いない。それがいよいよ、家庭生活にも波及しそうだ。

 日本総合研究所の試算によると、2007年と同じ買い物をして、電気・ガスなども同じように使った場合、4人世帯(夫婦、子供2人)で、月額4800円ほどの負担増になるという。年間では6万円近くにのぼる計算だ。

 4月13日の日経新聞によると、2008年の主要企業の賃上げは全体で月5870円、1.91%増となったが、これを日本総研の試算に重ね合わせると、月1000円程度の実質アップにしかならない。それも、この賃上げは正規社員が主要対象。だから、非正規社員の多くは物価上昇で給料が実質目減りする人も少なくないと推定される。

■減税は消費を喚起する

 今回のガソリン税の暫定税率の期限切れが1年続くと、2兆6000億円の税収不足になるそうだ。知人の財務省職員が「国民1人あたり2万円ですよ」と文句タラタラだった。

 財務省氏に逆らうようで申しわけないが、私は暫定税率の復活には反対だ。道路特定財源がいかに国民生活と無縁の使い方をされ、議員や自治体など公的機関の“生活費”になっていたか。その事実を知った以上、いくら「道路は必要」と言われても納得できない。

 それどころか、消費喚起のための減税の原資という意味で、「霞が関の埋蔵金」はここにあったんだ! という気分である。一般財源化にする方向で話は進んでいるが、この1年はこのままで行ったらどうか。生活実感を伴わない政策しか出せない政党はいずれ滅亡する。

(コラムニスト:本間 俊典)

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