2008年04月16日(水) 00時14分
<文化放送>「死刑の瞬間」放送へ 昭和30年代録音(毎日新聞)
ラジオの文化放送は15日、死刑執行の瞬間を録音したテープを来月6日の報道番組の中で放送すると発表した。こうした模様がマスメディアで公表されるのは極めて珍しい。
放送は5月6日午前10時から55分間、仮タイトルは「死刑執行」。
同局によると、執行の瞬間を収めたテープは、昭和30年代に大阪拘置所が刑務官の教育や死刑囚の待遇改善を目的に作成。当時の法務省矯正局長にも提出されたという。録音時間は30〜40分で、たばこをすすめられた死刑囚が刑務官と談笑したり、読経の声、ロープがきしむ音など、執行の瞬間と前後の音声が入っているという。
テープの存在について、法務省は「確認できる資料がない」としている。同局は「テープが大阪拘置所作成のものであることや、現在の絞首刑が録音当時と同じ手順で行われているという裏付けも取った」と説明。死刑囚の遺族にもインタビューし、独自入手したテープを放送する了解も得たとしている。個人名が特定される音声については、イニシャルに変えるなど編集作業で配慮するという。
同局は「市民が量刑を決める裁判員制度のスタートを来年5月に控え、死刑の実態を知ってほしい」と話している。番組では、文化放送記者が拘置所職員や検察官OBらに行ったインタビューの模様も放送される。【岩崎信道】
◇極刑議論に意義
服部孝章・立教大教授(メディア法) 日本で死刑執行が相次ぎ、社会全体で是非が問われるなか、極刑について考えるという点で意義がある。番組の目的は死刑制度に対して疑義を示すものだろうし、遺族の了承を得ていれば問題はない。ただ、放送の必要性や職務上知り得た情報の取り扱いについて議論が起こりうるのではないか。
◇放送控えるべきだ
元最高検検事の土本武司・白おう大法科大学院長(刑法)の話 死刑執行は秘密性の強いものとして、日本では明治以来非公開とされてきた。しかし一般市民が死刑や無期刑の事件を審理することになる裁判員裁判を目前に控えており、死刑に関しても一般的な情報はなるべく国民に知らせるべきだ。ただし文化放送が予定している内容では個々の死刑囚のプライバシーに影響する可能性が高く、放送は控えるべきだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080416-00000003-mai-soci