自分の行動を、いまいる場所の情報=位置情報と共に記録できたら便利だ。すでに携帯電話などでは、人工衛星で得た位置情報を基に、写真を撮影地点を一緒に記録するような機能が実現しているが、実は無線LANでも位置の特定ができることは、あまり知られていない。
ソニーが育てたその技術を携えて起業したクウジット社長の末吉隆彦さんに、今後の展開などを聞いた。
末吉 そうですね。GPSは人工衛星が発している電波を受信して、位置を割り出します。このため天空が開けた場所でないと動きません。それも複数の衛星の電波を同時に捕らえなければなりませんので、地下や屋内はもちろん、都会のビル群の中でも計測は難しくなります。GPSと違って、我々が開発したPlaceEngineの技術は、測位に無線LANのアクセスポイントが発する電波を利用するので、地下や都会に強いという特長があります。
末吉 そんなことはありません。お金を払って使う無線LANのアクセスポイント(ホットスポット)は、確かに全国には数千か所しかありません。しかしPlaceEngineはそうしたホットスポットにつなげて使うものではありません。位置を割り出すために利用するアクセスポイントは、オフィスや個人によって使用されているものです。住宅街などでパソコンから無線LANのアクセスポイントを検索すると、かなり多くのアクセスポイントがあることに気付いた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
末吉 その通りです。それらのアクセスポイントは、つなげてインターネットを利用することはできなくても、周囲と常に情報をやり取りしています。それが何を意味するかというと、アクセスポイントに割り当てられた固有アドレス(MACアドレス)などが分かるということです。無線LANが使われていれば、どんな場所でもそうした情報を取得することができます。
末吉 無線LANを検索すれば、受信できるアクセスポイントのリストができますね。このリストを既存のアクセスポイントのリストと照らし合わせます。それに加えて、各アクセスポイントから届く電波の強さを利用します。受信できるアクセスポイントのリストと電波の強さを分析することにより、位置を割り出すのが私たちの技術です。