家畜の餌となる輸入トウモロコシの価格が高騰しているため、代替品として米が注目されている。
飼料用の米を餌にした豚や鶏から生産された豚肉や鶏卵が、店頭に並び始めた。
食の安心首都圏などの10生協が加盟するパルシステム生活協同組合連合会(東京)は2月、組合員向けに「日本のこめ豚」の販売を始めた。
岩手県軽米(かるまい)町などで生産された飼料米を餌に配合し、養豚会社・ポークランド(秋田県小坂町)が豚2500頭を肥育した。
同連合会が扱う通常の豚肉より1割程度高いが、売れ行きは好調。4月からは月に1度、肩ロースやバラ肉などを販売する。よく購入するという横浜市の主婦佐藤慶子さん(49)は「軟らかく甘みが感じられる。国産の餌が多いと安心感も高まります」と話す。
日本では、飼料の多くを安価な輸入トウモロコシに頼っている。飼料の自給率は25%(2006年度)に過ぎない。一方、主食用の米の消費量は減り続け、耕作放棄地が増えている。飼料米を家畜の餌として使えば、自給率が上がり、農地も有効活用できる利点がある。
品種改良このため、ここ数年、東北を中心に飼料米の生産が始まり、多く収穫できる品種の開発も進んでいる。価格が高いのが問題だが、輸入トウモロコシの価格が高騰しているため、価格差もやや縮まってきた。農林水産省も昨年度からモデル的な事業に助成金を出すなど支援を始めた。
養豚会社・フリーデン(神奈川県平塚市)は4月、「やまと豚米(まい)らぶ」を発売した。岩手県一関市産の飼料米を与えた豚の肉だ。埼玉県春日部市のロビンソン百貨店で10〜13日、販売される。
養豚生産販売会社・平田牧場(山形県酒田市)は2年前から、生活クラブ生協連合会(東京)やインターネットなどを通じて「こめ育ち豚」を販売している。3月からは、JR田町駅(東京)内のホットドッグ店「エキタマ」のソーセージにも使われている。
米を餌にした鶏の卵も出ている。常盤(ときわ)村養鶏農業協同組合(青森県藤崎町)は昨年10月から青森市内のデパートなどで「玄米玉子」を販売している。鶏の餌に、飼料米を57%配合している。
鈴木養鶏場(大分県日出(ひじ)町)も昨年11月から「豊の米卵」を販売している。
牛についても試験的な取り組みが進んでいる。JA宮崎経済連は昨年から、肉牛や乳牛の餌に飼料米を混ぜており、今後、肉質への影響などを調べていく計画だ。
自給率向上も飼料米に詳しい東京農業大学農学部准教授の信岡誠治さんは「海外から安い穀物を輸入するという前提が崩れつつあり、穀物飼料の国産化を視野に入れる必要がある。食料自給率が上がるという意義を考え、機会があれば購入してほしい」と話している。