三越と伊勢丹が1日経営統合し、三越伊勢丹ホールディングスが発足した。売上高ではJ・フロントリテイリング、高島屋を抜いて1位に躍り出る。
業績が低迷する三越の営業改革に「伊勢丹流」を取り入れていく考えだ。ただ、店名などは変わらないため、消費者が大きな変化を感じられるのはまだ先になりそうだ。(越前谷知子)
全国32店舗で始まった「誕生祭」では、両社が共同企画した衣料、雑貨や食品など約1000種類の商品を販売した。1日の記者会見で武藤信一会長兼最高経営責任者(CEO)は、「プラダなど一流ブランドの限定品は、1社では難しいが(統合によって)可能になった」と、早速の統合効果をアピールした。
仕入れ別々三越と伊勢丹は引き続き商品の共同企画を進め、対象を増やす方針だ。ただ、多くの仕入れは今後も両社が別々に行い、自社の店舗ごとに顧客層に応じた品ぞろえにする。このため、伊勢丹で手に入る商品が、続々と三越にも並ぶということにはならない。
また、統合後も両百貨店の店舗名は同じだ。インターネットによる通信販売も当面、別々に運営する。
カード事業の統合も、システム統合を慎重に進めるため早くても4年後となり、それまでは相互利用できない。伊勢丹カードはカード会社と提携しておらず、当面は三越の店舗では使えない。三越カードは現金支払いの場合でも5%値引きされるのが特徴だ。ただ、対象は引き続き三越の店舗だけだ。
しばらくは、統合による消費者のメリットは限られたものになるとみられる。
システム導入一方、経営統合の成否のカギを握るのは、伊勢丹の情報システムを三越に導入することで、顧客層に応じた売れ筋商品を的確に仕入れるようにすることだ。
伊勢丹の強みは売れ筋の商品をそろえる力にある。色、サイズごとに管理する独自の情報システムで商品発注し、効率的に売り切る。メーカーからも重要な納入先として商品が集まり、「流行ブランドの出店先を競う際の交渉力が、圧倒的に強い」(業界関係者)という好循環を生んできた。
三越は2010年度に伊勢丹の情報システムを導入する。「売れ筋商品の品切れがなくなるのはお客様にとってプラス」(石塚邦雄・社長兼最高執行責任者=COO=)と期待している。
10年に増床を計画する銀座三越と、11年に出店予定の大阪三越で、伊勢丹のノウハウをどう生かしていくかが焦点となりそうだ。
ただ、伊勢丹は若い世代の顧客に強く、三越は中高年層の支持が厚い。商品調達に関する伊勢丹の強みが、すぐに三越の収益増につながるかどうか、はっきりしない面もある。