2008年03月27日(木) 11時44分
震災、いじめ、職探し…環境変化が影響か 岡山突き落とし事件の少年(産経新聞)
阪神大震災、いじめ、進学断念…。JR岡山駅の突き落とし事件で逮捕された大阪府大東市の少年(18)は幼少から最近に至るまで、人生の転機を何度も迎えていた。少年は、岡山へ向かうきっかけとなった家出の理由を「進学断念もその一つ」と供述。事件には、少年を取り巻く環境の変化が心理的に影響したとの見方も浮上している。
■震災後にいじめ
少年の父親によると、一家は母親(55)と少年の3人暮らしで、長兄は独立。阪神大震災で自宅が壊れ、兵庫県尼崎市から大阪府大東市に移り住んだ。少年は当時小学生で、その後、同級生からいじめを受けるようになり、体に青あざができていることもあったという。
いじめは中学校に入るとエスカレート。同級生によると、いじめは主に言葉によるものだったが、机やイスを投げつけられるなどの暴力もあったという。中学1、3年の担任だった男性教諭(54)によると、少年は1年生のころに、同級生4、5人に体格のことなどを揶揄(やゆ)され、学校側が加害者側の保護者を呼んで話し合ったことがあった。教諭は「その後はトラブルはなかった」と話す。
■遠い高校へ
しかし、いじめは収まっていなかった。同級生らは、自分たちよりも体格のいい少年を“格上(かくうえ)狩り”と称して標的にした。体育の授業後、汗のにおいを「くさい」、「半径2メートル以内に近づけない」などとはやしたてた。少年は言い返すなど抵抗もしたが、「本気になって反論するので、ますます周囲から浮いていった」という。
少年は中学3年の2学期に、自ら高校の説明会に出かけ、進学先を池田市内の学校に決めた。大東市の自宅からは電車を乗り継いで約1時間半かかる。当時の担任は「通うのが大変だぞ」と言ったが、少年は「大丈夫」と答えたという。ある同級生は「いじめを避けるために、遠い学校を選んだのでは」と推測する。
高校では大学進学を目指していたが、家庭の経済的な理由などで断念。少年は高校関係者に、最終的には就職するために簿記の資格をとって、事務仕事をしたいと話していたという。
■前日も仕事探し
しかし進学の夢は捨てきれなかった。父親に「家が貧しいので、お金をためて国立大学に進学したい」と明かし、冬休みに郵便局でアルバイトをしたほか、事件前日の24日には父親と大阪・梅田のハローワークを訪れ、仕事を探していた。父親は慌てないでゆっくり考えるよう諭したという。
一方、職探しは難航しており、約3カ月前には、大東市内の駅で少年とばったり会った小中学校の同級生に対し「金が足りず大学に行けない。社会人になることを決め、就職活動をしているが仕事が見つからず難しい」と話したという。
少年は同日夜に一家で食事中、茨城県土浦市の8人殺傷事件事件がテレビのニュースで報じられた際、父親に「こんなことしたらあかんで」と言われ、普段通り「うん」と返答したという。少年の心の内について、同級生の1人は「自分から人に接するのが上手じゃなかった。だれにも相談できず、爆発したのでは」と話した。
◇
県警は27日、容疑を殺人に切り替えて少年の身柄を岡山地検に送検した。
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