2008年03月20日(木) 08時00分
チベット騒乱 ほころぶ中国の情報統制 携帯・ネット“真実”流出(産経新聞)
中国チベット自治区などでの大規模な騒乱の発生以降、中国当局は国内でテレビ、インターネット、電話を一部遮断するなど、情報封殺に躍起になっている。ただ、その効果は限定的で、厳しい規制をかいくぐり、騒乱の画像や映像が内外に広まりつつある。情報統制は中国国民の政府への不信を高めただけではなく、むしろ携帯電話やネットが情報流出に重要な役割を果たし国際社会を動かしたことにより、海外からの厳しい批判を招いている。(北京 矢板明夫、ロサンゼルス 松尾理也)
北京にある産経新聞中国総局の衛星テレビには14日ごろから、電波障害が起きている。CNNやNHKをはじめとする外国のチャンネルでチベット関連のニュースが始まった途端、画面が黒くなり音声も消える。次のニュースまでこの状態は続く。同様の現象は中国全土でみられるという。
ネットでは、チベット騒乱と関連するキーワードが検索不可能となり、米国に本拠を置く動画投稿サイト「ユーチューブ」も利用できなくなった。チベット自治区ラサに電話をかけても、寺院などは「回線故障中」の録音が流れ、不通になっているところが多い。
中国当局は騒乱を「一部の暴徒の仕業」と印象づける情報戦略も始めている。チベット人とみられる若者が放火し暴れる映像や、親族を失った漢族被害者への国営中央テレビのインタビューなどを繰り返し放映している。
しかし、情報の遮断と操作による効果は、中国ではもはや限定的だ。チベット問題に関心の高い人は携帯電話のショートメッセージで情報を交換し、海外サイトへのアクセス制限を解除する専用ソフトを使うなどし情報収集をしている。
チベット騒乱に関する中国当局の一方的な報道との違いを知った中国人は、自国メディア不信をさらに高め、外国メディアへの依頼度は加速した。「(中国共産党機関紙)人民日報は日付だけが信用できる」と揶揄(やゆ)する知識人もいる。
一方、今回、反中国政府の立場から活発な情報提供を行っている非政府組織(NGO)「チベット人権民主化センター」(インド・ダラムサラ)は、中国四川省での抗議デモ中に治安部隊に射殺されたチベット人の遺体だとする写真をネット上で公表した。
現地の状況を伝える記事も連日更新されている。ユーチューブなどの動画サイトにも、携帯電話のビデオカメラ機能を利用して撮影されたとみられる映像が公開されている。中国では閲覧規制がかけられたが、海外には及ばない。
こうした状況を米紙ワシントン・ポストのコラムニスト、アン・アップルバウム氏は「昨年はミャンマーから、そして今年はチベットから、不鮮明で素人くさい画像がインターネットに流れた」と指摘する。アマチュア画像の絶対量はまだまだ小さいものの、「携帯電話は、一部の東アジアにとって、ニュースを伝えるためのもっとも重要な手段となった」と強調した。
中国当局が外国人のチベット入りを禁止した措置に対し、17日の中国外務省の会見では、「記者の安全を守るという理由なら、なぜ中央テレビを許可したのか、不公平ではないか」との抗議が外国メディアから殺到した。統制の網の目を抜けた情報の流出は、海外メディアを中心とした国際世論をすでに動かしている。
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