四国4県から約46億円を集めたまま営業停止した「ベルル生命医療保障共済会」(徳島市)の運営会社役員による詐欺事件で、顧客から共済商品などの掛け金をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた常務の竹中美千代被告(52)に対する初公判が18日、地裁(畑山靖裁判長)であった。罪状認否で竹中被告は「だますつもりはなかったが、会社を立て直したい一心で社長(2006年10月死亡)から言われるままに販売した」と述べ、債務超過状態で販売した事実については認めながら、詐欺行為については犯意を否認した。
検察側は冒頭陳述で、社長が病気で入退院を繰り返すようになった02年ごろ以降、「竹中被告は社長の代わりに精力的に会社経営に参画し、主体的にベルルグループの経営を行っていた」と指摘。05年8月ごろには借入金債務が2億円以上、共済商品などの返済金として約40億円、全国建設工事業国民健康保険組合(全国建設国保)への債務残高が6億円以上と多額の負債を抱えていたが、預貯金は1000万円に満たなかったことを明らかにした。また、営業社員には、不安を感じて退社されないよう、財務状況が劣悪であることを明かさなかったとした。
これに対し、弁護側は、竹中被告が▽グループの業務全般を統括していた▽社長と共謀した▽ウソを言って誤信させた——など5点について否認。「被告は従属的立場。償還できると信じて業務を行ってきており、被告には詐欺の行為はなかった」と主張した。
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竹中被告は黒のデニムの上着にグレーのズボン姿で入廷し、畑山裁判長から問いかけられると、一瞬言葉に詰まりながら「最初からお客様をだますつもりは毛頭ありませんでした」と答えた。そして「たくさんのお客様を裏切ることになり、心の底から謝罪の気持ちでいっぱいです」と声を絞り出すと、左手で目頭を押さえ、一礼して着席した。
初公判を終え、竹中被告らを相手取った損害賠償請求訴訟を起こしている「ベルル問題被害対策徳島弁護団」の篠原健事務局長は「本当のことをしゃべっているのか疑問だ。公判で全国建設国保との関係がさらに明らかになれば、訴訟にも(有利に)影響してくるのでは」と話した。
傍聴に来た県内の70歳代女性は、個人自由年金を数百万円預けたといい「法廷にまで来て『だますつもりはない』と言っているのは許せない。年も取り、あした何があるかわからん。泣くに泣けない」と憤っていた。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20080318-OYT8T00697.htm