今年1月に3人死傷の火災が起きた横浜市保土ヶ谷区のホテルで、契約していた大手警備会社「セコム」(東京都渋谷区)のオンライン火災監視サービスが工事ミスで作動していなかったことが15日、分かった。
サービス開始から3年半、関連機器が正常に作動するかの点検を一度も行っていなかった。セコムが火災を知ったのは、近所の人が110番通報してから約5時間後。「安心」を売りにするセコムの企業責任が問われそうだ。事態を重くみたセコムは、全国で点検する。
セコムによると、「ホテル・ニュー京浜」(客室31)とオンライン火災監視サービスの契約を結んだのは2004年7月。
ホテルの各部屋にあった火災センサーとセコムのコントロールセンターとを回線で結び、24時間体制で異常を見張り、警報があると、119番通報や緊急対処員の出動によって、被害を未然に防いだり、最小限に食い止めたりすることになっている。料金は、防犯システムと合わせて月約4万2500円だった。
工事は同月、セコム社員が行い、火災センサーから受け取った情報を、コントロールセンターに送る「火災受信機」内の回線のつなぎ方を間違えていた。
セコムの社内マニュアルでは、設置したその場でセンターとつながっているかを確認することになっているが、社員は確認を怠っていた。
さらに、火災センサーの定期点検は別の会社が行っていたが、セコムは火災受信機からコントロールセンターへの情報発信が正常に行われるかなどの点検を一度もしていなかった。
火事は1月4日午後、3階客室から出火し、一部屋約20平方メートルを全焼。男性(当時58歳)と女性(当時58歳)の2人が遺体で見つかった。別の部屋の男性(54)は3階から飛び降り、重傷を負った。
火災センサーは作動したが、ホテル従業員は火や煙がどの部屋から出ているのか確認に手間取ったという。近くで農作業をしていた男性が午後4時4分、最初に110番通報している。ホテルはほぼ満室で、約60人の客がおり、避難した。
神奈川県警保土ヶ谷署や消防の現場検証が始まって、セコム社員がいないことに気付いたホテル側が午後9時ごろ、「どうなっているのか」と問い合わせて、セコムは、初めて火事があったことを知ったという。
セコムはホテルに対し、防犯システムの料金を除いた3年半分の料金約30万円分を返還し、謝罪したが、ホテル側は「ミスは納得できない」と話している。
安田稔・セコムコーポレート広報部長の話「安心を売る立場にありながら許されない重大なミス。しかも、点検をしていればミスは発見できた。当社に責任があり、おわびしたい。今後、全国で点検し、安全管理を見直したい」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080315-OYT1T00401.htm