大学生と交際相手が仕組んだとされる大阪市の痴漢でっち上げ事件で、痴漢に仕立てられて現行犯逮捕され、一日近く拘置された堺市北区の会社員国分和生さん(58)が十三日、「警察は最初、きちんと言い分を聞いてくれなかった」などと当時の状況を語った。
国分さんは二月一日午後八時半ごろ、帰宅するため大阪市営地下鉄御堂筋線の電車に乗り、ポケットに両手を入れて立っていた。天王寺駅に着く直前、人が肩に触れたと思った後、隣の女がしゃがみ込んで泣き、近くにいた甲南大四年蒔田文幸容疑者(24)=虚偽告訴容疑で逮捕=が「触りましたね」と言った。
「はめられた」
そう感じ、疑いを晴らそうと自分から電車を降り、駅員に声をかけて事務室に行った。駆け付けた警察官はほとんど蒔田容疑者と女の話ばかりを聞き「白状したら向こうも許すと言っている」「徹底的にやってやる。おまえ連行や」などと怒鳴った。むなしさを覚えた。
阿倍野署の留置場では寒さと不安で一睡もできなかった。
「犯罪者にされてしまい、汚点が残る。嫁入り前の娘がいるのにどうなるのか。会社もやめなくてはいけないかもしれない」
家族への連絡を頼んだが聞き入れられず、二日午後六時ごろに釈放された。「精神的に追い込まれた。一週間もいたら信念を貫けたかどうか分からない」。家族は心配し、堺東署に捜索願を出していた。
釈放後も警察の捜査を信用できず、家族と自力で証人を捜そうかとも考えた。女が自首した後の二月中旬、阿倍野署で調べを終えると、署員が「わたしたちもだまされた。申し訳ない」と謝罪したという。
国分さんは「犯人は卑劣で許せないが、誰にでも起こること。二度とないようにしてほしい」と訴えた。