【サイパン=山下昌一】ロス疑惑「一美さん銃撃事件」を巡って、元輸入雑貨会社社長、三浦和義容疑者(60)(日本で無罪確定)が先月22日、米自治領サイパンで逮捕されて6日で2週間が経過した。
一時は約100人に達した日本からの報道陣は減少傾向にあるが、凶悪事件を扱うことの少ない地元メディアは、連日のように大きく報じている。現地の裁判所も、審理のやり取りを記録した録音テープを販売するなど情報公開を徹底している。
「サイパンに来て14年。こんな事件を取材できてとても興奮している」。地元紙サイパン・トリビューンのファーディー・デラトレ記者(40)は話す。同紙は三浦元社長の即時釈放の申し立てを退けた北マリアナ上級裁判所の5日の審理についても、1面と4面で詳報した。
島の人口は約6万5000人。海外からの渡航者の大半は観光目的で、元社長が逮捕されるまでは、賃金不払いの民事訴訟や強盗事件などを大きなニュースとして報じていた。地元警察の幹部も「この島では殺人などの重要犯罪はめったにない。のんびりした人が多いんだ」と話した。
そのためか、日本の報道陣の取材手法は“新鮮”に映るようだ。
先月27日、北マリアナ上級裁判所で開かれた第2回審理では、日本の報道陣約50人が三浦元社長の周りに押し寄せた。このため、裁判官が「パパラッチスタイルの取材は許されない。裁判所の命令に従わなければ逮捕する」と警告。裁判所の決定文にも明記される異例の事態になった。
ただ、決定文には「裁判手続きにメディアが付き添うのは歓迎だ」とも書かれており、手続きをできる限りオープンにする姿勢が見える。
北マリアナ司法省も29日、マシュー・グレゴリー長官らが、日本の報道陣向けに記者会見を開き、検察側の主張などについて詳しく解説した。政府の広報官は「遠くからたくさんの記者が来ているので、重大なニュースと感じた。わかりにくい手続きなので、きちんとした説明の場が必要だ」と話す。
裁判所では情報公開手続きで、三浦元社長の逮捕状や裁判資料のコピーが手に入るほか、法廷内のやり取りを録音したカセットテープの販売もしている。1巻7・5ドル。このサービスはメディアの関心が高い事件に限られるという。
三浦元社長が拘置されている同島南部のススペ地区は、太平洋戦争末期に米軍が上陸して日本軍と激戦が交わされた場所。同地区のホテルに勤務する日本人男性(33)は「最近の日本についての大ニュースと言えば、2005年の天皇陛下の来訪やJALのサイパン直行便撤退ぐらいだった」として、「この地区が日本絡みでこんな騒ぎになるのは因縁を感じる」と漏らした。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080225-1331217/news/20080306-OYT1T00418.htm