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2008年03月06日(木) 18時56分

裁かれないレイプ犯こそ、最も許されざる存在だオーマイニュース

 私は、12年ほど前から約5年間、興信所を営んでいた事があります。広告媒体はおもにタウンページで、広告には依頼の窓口を広げるため、「秘密厳守・相談無料」とするのが業界の慣わしでした。

 興信所の仕事は1本の電話から始まります。そのとき関わった調査については、依頼人・被調査人とも特定される事があってはなりません。以下の記事はレイプに関するものですが、この守秘義務のため、文中にはぼやける部分がありますこと、ご承知おきの上、お読みください。

 興信所への個人からの依頼は、9割が浮気調査でした。ところが、私が廃業する1年ぐらい前からボディーガードの仕事が舞い込むようになりました。

 ガードの対象者は子どもでも企業経営者でも、もちろんヤクザでもなく、普通の女性です。

 彼女たちは誰から身を守って欲しいというのか。相手の7割は、別れた彼や夫でした。当時はまだストーカーという言葉が流行り始めたばかりで、交際関係・婚姻関係にあった相手からの性的暴行には、警察も不介入の姿勢でした。

 彼女たちのほとんどは、泣き寝入りというより、寝入ることも出来ないトラウマを背負います。

 男性である私が聞き、理解した範囲での解釈になりますが、心ならず性をもてあそばれた女性は、プライドも過去も未来もズタズタにされます。自己に対する愛情までも奪われるケースが多いのはさらに深刻です。

 訴えることもできない、人にも話せない、張り裂けんばかりの思いで眠れない夜を過ごし、タウンページにある「秘密厳守・相談無料」の電話番号に、ただ話を聞いて欲しい一心で、電話をかけてくるようです。

 仕事にならない話を、私がなぜ朝まで聞き続けたかというと、ひとことで言えば人が好きだからであり、勘違いを恐れずにいえば、「興味本位とは別の好奇心」からです。

 「その人の悩みを知りたい。仮にその人の役には立てなくても、それを踏まえた上で人に優しくできるかもしれない」と思ったからです。

 彼女たちには、毎日ボディーガードを付け続けるだけの経済力はありません。私は朝まで話を聞き、アドバイスだけでは改善が見込めないときには、日数を問わず1万円で、レイプしにくる男と出くわすまでのボディーガードを引き受けました。

 私から見れば、そうした男たちは極端に弱い人間です。そのことを自分自身でよくわかっている男たちです。自分の弱さを重々承知していながら、さらに弱い立場の女性に乱暴を働くその男たちを、私は絶対に許せませんでした。

 過去に付き合ったこともない、言ってみれば通りすがりの人からレイプされた女性からも、電話を受けたことがありました。風俗で働いていて、客からレイプされた子もいました。

 何歳だろうが、どんな仕事をしていようが、どのような相手であろうが、レイプされ、尊厳を踏みにじられた女性の気持ちは同じです。

 それは、訴えることは出来なくても、勇気がなくて誰にも話すことすらできなくても、彼女たちは決して、そのおぞましい事件が闇に消えてゆくことを望んでいないということです。

 なぜなら、被害者本人は、忘れたくても忘れられないからです。

 私は、犯罪で検挙され法の裁きを受ける人は、まだましだと思います。法の裁きから逸脱していないからです。悪いことをしたのに、法の網を潜り抜け、裁きを受けずに入る人たちこそが、真の法からの逸脱者だと思うのです。

 私が聞いた彼女たちの叫びに、社会がどうあるべきかについては、今も答えを出せずにおります。

 しかしながら、公に出てくるレイプに関する意見や言葉の中に、「彼女たちの苦しみを理解しよう」という気持ちが汲み取れるものを見ると、一瞬でも彼女たちの心が救われる事は確かであります。

(記者:匿名希望〈元探偵〉)

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