奈良市立の全幼小中高校の約6割にあたる64校が、「無料だから試して」と業者に勧められて浄水器を設置したところ、この業者が経営難に陥ったため、クレジット会社から月1台1万円前後のリース料の支払い請求を受けていることが分かった。各校は業者に頼まれ、リース契約書に校印を押していた。校長たちは「まさかこんなことになるなんて」と大わらわだ。
「無料」で設置されていた浄水器。部活動の生徒らも飲用水として利用していた=奈良市の市立中学校で
市教委などによると、浄水器設置を勧めていたのは、同市内の教材販売業者。大半の学校が昔から取引があった。05年9月ごろから、業者が各校を訪問、東京の会社が製造している40万円前後の「電解水生成器」という浄水器を示し、「雑菌が繁殖しなくて衛生的で、健康にもいい」と設置を持ちかけた。
その際、「リース費用はうちが持つので一切必要ない。感想を後で聞かせてもらえばいい」と話したため、各校長らは信用してリース契約を結んだ。クレジット会社から毎月請求書が送られてくるようになったが、業者が「捨てておいて」と言うので校長らは気にとめていなかった。実際に業者がリース料を立て替えていたとみられる。
だが今年2月になって突然、支払い督促の電話が各校にかかり始めた。その直後に、業者が債務超過で倒産準備に入っているという連絡を受けた。
ある中学校長は「数十年にわたって出入りしてきた業者。その信用からあまり契約の中身を確認せずに受けてしまった」と悔やむ。この学校では生徒が部活動の前にペットボトルに浄水器の水をくんで飲んでいるという。
業者の代理人弁護士によると、浄水器設置は奈良市以外の同県北部の学校や運動施設にも広がっている。生駒市でも小中学校9校が設置している。
奈良市教委は「浄水器の設置はあくまで各学校長の判断。基本的には市教委として取り組む問題ではない」との立場だ。このため校長らは今後、費用を出し合って弁護士を立て、業者側に契約の解約を求めていく。校長の一人は「無料だからいいか、と甘く考えていた。いい勉強になった」と話す。 アサヒ・コムトップへ
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