日本の裁判所で被告の無罪が確定した26年余り前の事件が、なぜいま米国で強制捜査の対象になるのか——。
事件の発生場所はカリフォルニア州内で、同州が捜査の管轄権をもち、刑事手続きには同州法が適用される。犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴を提起できなくなる時効について、同州法は死刑、終身刑などが適用される罪についてはいつでも公訴提起できる、と定めている。
この規定には例外もあるが、三浦元社長が事件以降ほとんどの期間を日本で過ごしていることから、米国の刑事手続きに詳しい駿河台大法科大学院の島伸一教授は「米国外に滞在している間は算入されず、現在も訴追可能と考えたのだろう」との見方を示す。
日本には殺人などの重大犯罪について犯罪が起きた現場が国外でも犯罪の行為者が日本人なら日本の刑法を適用するという規定があり、今回の事件はこれに基づいて日本で刑事手続きが進んだが、米国はそれとは別に刑事手続きを進めることができる。
島教授は「長い年月を経て逮捕したことから、例えば共犯者が証言した、新たな目撃者が出てきたなど、起訴するに足りるだけの証拠が手に入ったのだろう。三浦元社長が日本国内にいるときは身柄拘束には日本側との捜査共助が必要だが、元社長がたびたび米国内に出入りしていることを察知し、タイミングを計って逮捕に踏み切ったのではないか」と話す。
事件は、ロス地検とロス市警が共同で捜査していた。担当検事だったルイス・イトウさんは当時、朝日新聞の取材に対し、「共謀罪での立件なら可能だ」と自信を見せていた。
日本と米国は06年に刑事共助条約を結んでおり、今後は同条約に基づいて捜査記録などの提供などについて捜査当局同士やりとりすることが可能だ。 アサヒ・コムトップへ
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