【問1】この一年間、殿下にとって印象深かった出来事を幾つか御紹介ください。殿下は昨年、ポリープの切除手術を受けられました。退院の際に「健康の大切さを実感した」と述べられましたが、健康維持のためにどのようなことを心掛けていらっしゃいますか。皇室では、天皇陛下がホルモン療法を続けられ、皇后さまも今年初めに体調を崩されました。健康に不安を抱えられている両陛下を支えられるお気持ちもお話しください。
【皇太子さま】この一年を振り返ってみますと、国の内外で実に様々なことがあったと思います。
国内にあっては、新潟県中越沖地震、能登半島地震などの自然災害に加えて、食の安全、年金、社会格差など国民生活の安全と安心にかかわる問題が私の印象に残っております。特に食の安全は生活の基本であり、関係者の努力により、これらの問題が解決に向かうことを心から願っております。
国外にあっては、イラクやパレスチナ情勢など中東地域が依然として不安定であることや、様々な地域での紛争の問題なども心配です。また、世界的に地球環境問題がより重要性を増してきており、昨年はアメリカのゴア元副大統領やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)にノーベル平和賞が贈られたこともそのあらわれであると思います。
私のこの一年間の公務の中でも特に印象に残っているものとして、第1回アジア・太平洋水サミットに出席したことが挙げられます。これは、国連事務総長からのお話で、国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任して最初の活動でもありました。水の問題は、世界が直面している地球温暖化を含む環境問題や資源問題の重要な課題の一つです。今年も、名誉総裁としての立場で、水問題に関する様々な活動に取り組んでいきたいと思っております。
もう一つ印象に残っているものとして、昨年11月に静岡県で行われ、名誉総裁として出席したユニバーサル技能五輪大会があります。この大会は、世界各国の若者が技能を競う技能五輪国際大会と、障害のある人々が技能を競う国際アビリンピックという伝統ある二つの大会が、史上初めて同時に開催された大変意義深い大会であったと思います。世界各国から集まった若い人々が障害の有無にかかわりなく、ものづくりに熱心に打ち込んでいる姿には感銘を受けました。科学技術の進歩が著しい中で、殊に若い人々が日本のものづくりを支えていくということは、極めて大切なことと思いました。
国際交流の面では昨年の7月、モンゴルを訪問したことも強く印象に残りました。日本とモンゴルとの友好関係がいろいろな分野で、今後更に発展することを願っております。
健康に関する御質問に対してですけれども、昨年は十二指腸ポリープの手術で入院しました。お陰様で今は全快しており、今までどおりに公務をこなしております。短い入院期間ではありましたが、お医者様や看護に携わる方々の献身的な治療には、本当に頭が下がる思いがしました。また、内視鏡を使用しての最先端の医療に触れる機会にもなりました。
健康維持のために心掛けていることについてですけれども、生活の様々な面で留意しています。食生活はもとより、適度な運動も健康維持の上では大切だと思います。運動としてはテニスやジョギングが日常での運動になります。殊にジョギングは、短い時間で良い運動になりますし、雨や雪などが降っていなければ行うことができます。私自身は一回のジョギングでこの赤坂御用地の中を2周から3周するのですけれども、先月1か月間で、100キロメートルを超える距離を走りました。
今月17日に行われた東京マラソンでの参加者の多さや、皇居の周りを走るランナーの多さを見ても、国民の多くがランニングやジョギングを楽しんでいることがよく分かります。ジョギングは、無理をしなければ健康維持にとても役に立つと思います。もちろん、テニスや、回数は少ないですけれども、登山やスキーも私の健康維持には欠かせません。
両陛下の御健康に関しては、私は、両陛下が御健康でお元気にお過ごしになられますことを常に心から願っております。そして、いつでも必要なときには、皇太子として天皇陛下をお助けできればと思っておりますし、どのようにお助けするのが最もお力になれるか常に考え、努めていきたいと思っております。
【問2】今年、皇太子同妃両殿下は御成婚15周年を迎えられます。15年間を振り返り、印象に残ったこと、苦労されたことなどをお聞かせください。現在療養中の妃殿下の御回復状況と、本格的な御公務復帰の見通しはいかがでしょうか。最近、妃殿下の私的な外出が増えていますが、殿下はどのようにお考えですか。
【皇太子さま】もう結婚15周年かと、年月のたつのは早いものと思います。結婚10周年の際に雅子と共に詳しく感想を述べておりますので、その後の5年間に限らせていただきますと、何より大きいのは愛子が成長し、3人でいろいろな楽しみや喜びを見いだすことができることです。他方で雅子が病気を患い、現在も治療中であることも大きな出来事でした。雅子の現在の状況は、昨年の誕生日に際して、本人の感想と東宮職医師団の見解に述べられていますように、少しずつではありますけれども快方に向かっていますが、なお治療を必要としております。雅子は、依然として体調に波がある中、自分でもいろいろと工夫をしながら、公私を問わず活動の幅を広げるよう努力してきており、公務についても少しずつではありますが、頻度が増えてきています。以前に比べ、公務の後の疲れからの回復も早くなってきているようには思いますが、頑張り過ぎて疲れることなどもありますので、お医者様からは内容を慎重に考えながら活動の幅を広げていくよう指導を受けております。公務については、回復に伴って少しずつ積み重ねていくことにより、徐々に復帰していくことになると思います。現状では、公私を問わず、心の触れ合いを大切にしながら、負担の少ないところから活動の幅を広げることが治療のために必要とのお医者様の見解を御理解いただき、引き続き長い目で見守っていただきたくお願い申し上げます。また、結婚10周年のときにも申しましたけれども、雅子は、いろいろな面で私の力になってくれていますし、私も、雅子を今後ともしっかりと支えていきたいと思っております。 アサヒ・コムトップへ
http://www.asahi.com/national/update/0223/TKY200802220340.html