【モスクワ=瀬口利一】ロシアの次期大統領選で当選が確実視されるメドベージェフ第1副首相は15日、シベリアのクラスノヤルスクで開かれた経済会議で演説し、「法秩序の強化と経済自由化の両立」を柱とする経済政策を発表した。
政府が当面、産業保護政策に関与しながら、国内経済の近代化を徐々に進め、国際競争力の強化をめざす発展の道筋を示したものだが、退任後の首相就任に意欲を示すプーチン大統領が公表した2020年までの長期戦略が下敷きになっており、「プーチン内閣」主導が見込まれる次期政権の性格を印象づけている。
メドベージェフ氏は、「(プーチン大統領の長期戦略は)野心的だが、必ず実現できる」と述べ、プーチン路線を忠実に継承する意向を表明。向こう4年間の任期中に技術革新や投資拡大を促す七つの政策を列挙した。石油、天然ガス部門では、近代技術を導入してエネルギーの安定供給に努めると宣言し、旧ソ連諸国を経由する欧州向けパイプラインの供給停止問題で高まる国際社会の懸念払しょくに努めた。
さらに、各種公共事業の民営化を進める一方で、原子力、航空、造船部門などで政府系企業の効率経営を図り、国際市場に進出する意欲を示した。また、潤沢な石油、ガス収入を背景に、ロシア金融市場を「世界の金融センターの一角」に成長させると宣言し、通貨ルーブルの国際的な信用力を高める考えを示した。メドベージェフ氏は、「法秩序」の強化を訴え、法律家出身の指導者をアピールした。
ただ、政策の中身は、ロシア経済を回復させ、発展軌道に乗せたプーチン政権の政策を踏襲している。プーチン大統領は14日の記者会見で、メドベージェフ政権下で首相として陣頭指揮をとる意欲を表明。12日付の有力紙「RBKデイリー」は「ロシア大統領府が選挙前に政府の機構改革や人事異動を準備している」と報じており、経済運営の主導権はプーチン氏が握る見通しになっている。