丸八証券の株価固定事件で、証券取引法違反(株価操縦)容疑で逮捕された前会長の吉田則雄容疑者(67)らが株価操縦したとされる06年4〜5月、同証券のコンプライアンス本部が法令違反の疑いが強いと指摘しながら、社内で「問題ない」と押し切られていたことが関係者の話で分かった。コンプライアンス本部長(当時54)は証券取引等監視委員会の調査中に自殺していた。
監視委や名古屋地検特捜部は、本部長の自殺の背景には、事件をめぐる社内のあつれきがあったとみており、吉田前会長らの違法性の認識や、法令順守を管理するコンプライアンス本部からの指摘への対応を調べている模様だ。
調べによると、同証券は冷凍食品会社「ケイエス冷凍食品」(大阪府泉佐野市)が06年3月に名証第2部に上場する際、同証券として初めて主幹事を務めたが、株価が下落して公募価格だった1850円を割り込みかけた。
このため吉田前会長が公募価格以上に維持するようリテール本部の当時の本部長と副本部長だった村上信雄(59)、嘉山幸男(52)の両容疑者=同容疑で逮捕=に指示し、2人は同年4〜5月、本支店に指示、約100人の顧客から公募価格と同額で計3万9000株の買い付け注文を受けて執行し、株を高値で固定させていた疑いが持たれている。
同証券の関係者などによると、当時、リテール本部からの「公募価格と同額の買い付け勧誘の指示」について、社内から「疑義のある取引行為では」との照会がコンプライアンス本部に寄せられた。
コンプライアンス本部はリテール本部に対し、「違法の疑いがある」と指摘したが、リテール本部は耳を貸さず、社内の照会にも、リテール本部が「問題ない」と回答していたという。
自殺したコンプライアンス本部長は内部管理部長、常務取締役なども兼務。監視委の調査は06年暮れから始まっていたが、翌07年1月に自殺した。
同証券は、コンプライアンス本部長の死亡について「心筋梗塞(こうそく)のため逝去いたしました」と広報。朝日新聞の取材に対し、「広報した以上のことは承知しておりません」としている。 アサヒ・コムトップへ
http://www.asahi.com/national/update/0214/NGY200802130003.html