記事登録
2008年02月13日(水) 23時14分

<石橋産業事件>バブル紳士と闇社会の守護神…実刑確定へ毎日新聞

 「バブル紳士」と「闇社会の守護神」の二人三脚にピリオドが打たれた。許永中(60)、田中森一(64)両被告の実刑が確定することになった石橋産業事件の最高裁決定。現在保釈中の田中被告も近く収監され、バブルの最中に出会った2人がそろって、刑に服することになる。

 2人の接点は、戦後最大級の経済事件とされる「イトマン事件」にさかのぼる。許被告と共謀した伊藤寿永光・元常務(特別背任罪で実刑確定)の顧問弁護士が田中被告だった。「伊藤より許の言い分のほうが正しい」と、やがて顧問を辞任。許被告が93年12月に保釈されると、暴力団組長の仲立ちで保釈祝いをし、急速に親密さを増していく。

 許被告は大阪市生まれ。大学中退後、経済成長を背景に建設業に乗り出し、企業乗っ取りや株の買い占めなど大型経済事件では常に名前が取りざたされる存在に。だがイトマン事件で逮捕・起訴され、05年に実刑が確定した。保釈中の96年に起こしたのが今回の石橋産業事件だった。その捜査が進んでいた97年10月には、渡航先の韓国で姿を消したが、99年11月に東京都内で見つかり、保釈が取り消され、6億円の保釈保証金を没収された。

 一方、田中被告は長崎県・平戸島の生まれ。25歳で司法試験に合格し、71年に検察官に任官。大阪地検特捜部時代に、容疑者の自白を巧みに引き出す「割り屋」として頭角を現し、東京地検特捜部に異動後もエースとして活躍した。

 88年に弁護士に転身。「検察の退職金が800万、弁護士の開業祝いだけで6000万」。金銭感覚がまひしたという。「ヤメ検」弁護士を頼る金融業者、暴力団関係者ら「バブルの紳士」が群がり、彼らの守護神となるのに時間はかからなかった。

 昨年末に出た対談本で上告について問われ「100%無理。もう覚悟してるわ」と語った田中被告。最近は苦学した自分の経験から、奨学金を交付する財団の設立を目指していた。先月、東京都内で開いた講演会では「夢を持ってがんばる人のために将来(財団を)やっていくのが、私の残された人生の夢だ」と語っていた。【高倉友彰、田中龍士】

   ◇

 最高裁決定を受けて、許、田中両被告の主任弁護人を務める木下貴司弁護士は「詐欺は成立していないと確信している。非常に残念だ」とのコメントを出した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080213-00000149-mai-soci