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2008年02月12日(火) 21時42分

不備だらけの消費者関連法 毒ギョーザ事件で浮き彫りに産経新聞

 福田内閣が消費者行政の一元化へ急ぐ中、中国製ギョーザによる中毒事件は組織のあり方だけでなく、現行の消費者関連法が機能していない現実をも浮き彫りにした。現行法には「消費者の利益保護」の観点が欠落しているうえ、法で定められた具体策が講じていない事例もある。自民党は法体系が未成熟として見直しを求めているが、福田内閣は関連法の整備にも迫られている。

【関連フォト】中国河北省の「天洋食品」の内部

 消費者の利益保護の観点が置き去りとなっているのが、平成18年4月に施行された「公益通報者保護法」。同法の趣旨は、従業員が消費・賞味期限の偽装など事業者の不正行為を目撃した場合、被害拡大を防ぐため、外部に告発しても解雇などの不利益を被らないよう保護するものだ。

 しかし、通報者は不正行為をした事業者の社員に限定されているうえ、行政機関などへの通報も、不正行為として信じられる証拠や理由などを示す必要があるからだ。さらに、通報対象は罰則のある法律に限られる。

 公益通報者保護法の制定過程で、内部告発者による「密告」を懸念した産業界に過剰に配慮された結果、被害拡大を防ぐという消費者保護の視点が欠落しており、ギョーザ事件を受けて自民党内には、同法の見直しを求める声が強まっている。

 過去の毒物混入事件で法整備されながら、その後、必要な防止策が講じられておらず、行政の不作為といえるケースもある。

 昭和62年に施行された「流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法」は、菓子から青酸ソーダが検出された森永・グリコ事件(昭和60年)を教訓に議員立法で制定された。

 条文では国に毒物混入の防止策を講じるよう求めているほか、警察官や海上保安官に対しては、毒物混入を確認した場合に関係行政機関への通報を義務付けている。

 しかし、行政機関の対策はこれまで、業者への巡回指導にとどまり、今回のギョーザ事件で通報態勢が不徹底だったことが露呈した。消費者問題に詳しい中村雅人弁護士は「中央官僚にとって議員立法は自分たちが苦労してまとめた法律ではないため、法律を担う所管官庁としての自覚がない」と批判する。

 昭和23年施行の「食品衛生法」も制度疲労を起こしている。中村弁護士は「行政は食中毒症状を起こす細菌の検出ばかりを見ていて、検出されないと『問題なし』と判断する」として、保健所の判断能力が硬直化している現状を指摘する。

 実際、ギョーザ中毒事件では、千葉市の被害者から苦情を受けながら市保健所の反応は鈍く、的確な措置をとれなかった。食品衛生法では食中毒の疑いがあれば自治体に通報することを規定しており、自民党や専門家の間では「食の安全を守るセンサーが機能していない」などと通報の徹底を求めている。

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