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2008年02月10日(日) 12時00分

底流を探る:鍼灸マッサージ治療院不正受給 元従業員は再就職難 /神奈川毎日新聞

 ◇院長自殺で実態解明困難
 横浜市最大の鍼灸(しんきゅう)マッサージ治療院の療養費不正受給問題で、横浜市の調査が難航している。院長(70)の自殺で実態解明が難しくなっているためだ。市は刑事告訴を視野に不正額を確定し、返還を求める意向だが、問題の長期化は避けられない情勢だ。一方で、勤務していた視覚障害者らは失職し、再就職もあまり進んでいない。【池田知広、写真も】
 ▼被害は4億円以上?
 院長は「横浜ドリーム・ケア」の名称で、▽土屋針灸マッサージ(同市中区)▽横浜みなみ針灸マッサージ治療院(同市南区)の2院を経営。施術の回数を水増しして、昨年4〜9月に正規の療養費より約5370万円多く受給した。
 市が不正受給を発表した8日後の1月26日、院長は福井県敦賀市で海に飛び込んで死亡した。横浜みなみ針灸マッサージ治療院の開設者だった元妻(64)も、31日に病死した。市保険年金課の担当者は「本人から話が聞けず厳しい状況です」と落胆する。
 ある元従業員の男性は「詐欺的な行為は4年ぐらい前から行われていたはず。市の被害額は4億円以上ではないか」と指摘する。
 ▼突然の解雇
 2治療院は閉鎖され、25〜30人の視覚障害者を含む従業員80人は全員が解雇された。ほとんどの人は不正受給を知らず、職を突然失った。一部の給与は未払いのままだ。
 視覚障害者は就職の門戸が狭く、従業員だった横須賀市の30代男性は「学校を出て初めて仕事した場所ですから、3日ぐらい立ち直れなかった」と話す。
 今月7日には、元従業員の視覚障害者を対象に、就職相談会が横浜市内で開かれた。14人が付き添いの親族らと訪れ、マッサージ業を営む4社と面談した。ハローワーク横浜の橋本京子職業相談部長は「こんなことで相談会を開くのは初めて。なんとか(求職者と企業の)出会いがあれば」と言う。元従業員の川崎市の男性(38)は「いい会社が見つかりました。院長は社会に対して償ってほしかった」と話した。
 ▼多額の政治献金
 松本純衆院議員(神奈川1区)と弟の松本研横浜市議がそれぞれ代表を務める自民党支部と後援会が、院長と元妻から政治献金を受けていたことも分かった。また松本市議が院長の依頼で、市に調査内容を問い合わせていたことも分かった。
 市と松本市議によると、昨年11月中旬、松本市議は院長から「市が調査に来るそうだが、どんなことか聞いてほしい」と頼まれ、市の担当者に電話で問い合わせた。担当者は「療養費の請求に疑義がある」と答え、松本市議は「あ、そうですか」と言って電話を切ったという。
 市の調査に圧力をかけたと見られかねない行動だが、松本市議は、「全くない」と否定。「院長には『調査中』と伝えた。不正請求は残念の一言」と話す。
 松本衆院議員側への献金は、03〜07年に計595万5000円。松本市議側へは計905万円。松本衆院議員は07年分の110万円を、松本市議は07〜08年分の420万円を返還した。

2月10日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080210-00000125-mailo-l14