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2008年02月05日(火) 01時47分

株情報開示 ウソを排除する対策を急げ(2月5日付・読売社説)読売新聞

 情報開示システムは、株式市場の重要な基盤の一つだ。それに思わぬ盲点があった。市場の信頼性を確保するために速やかな対策が必要だ。

 金融庁が、企業や株式に関する情報の電子開示システム「エディネット」の運用を改善する検討チームを発足させた。

 トヨタ自動車、ソニーなど大企業6社の株式の51%を取得したという虚偽の株式大量保有報告書が、エディネットに登録された問題を受けた措置だ。

 登録は金曜日の夕方、市場での取引が終了した後だった。株取得が本当ならば必要な資金が約20兆円にも及ぶ、あまりに異常な内容だった。その日の夜には金融庁が虚偽の可能性があると投資家へ注意喚起し、株取引に大きな影響を与えずにすんだ。

 これが取引時間中で、虚偽だとわかるのが遅れたら、市場に混乱をもたらしていたかもしれない。

 エディネットは、株式投資に欠かせない情報源だ。誰でも閲覧が可能だ。一方で投資家は、紙の書類を提出せずに、インターネットで瞬時に大量保有報告を登録できる。ウソの情報であっても簡単に掲載することができてしまう。

 株価のつり上げなどを狙った虚偽情報の登録が、実際に株価を動かす恐れもある。再発防止策と、同種のケースが起きた場合の対応策の整備を急ぐべきだ。

 誰がどの企業の株を大量に売買したかは、株取引の大きな判断材料になる。大量保有の報告は、情報に触れるのが一部の人に限られ、一般投資家が不利になるのを防ぐために設けられた制度だ。

 年間2万件に上る大量保有報告書の真偽を、開示前に一つ一つ厳密にチェックするのは難しいだろう。チェックのため開示までに時間がかかり過ぎれば、迅速な情報開示で投資家間の公平を図る制度の趣旨が損なわれる懸念もある。

 だが、株数や金額などから見て怪しい提出情報を自動的に抽出できるソフトを開発し、疑わしい情報を事前にチェックすることはできるのではないか。

 金融庁と証券取引所や、株式を取得された企業との連携強化も欠かせない。開示後でも虚偽情報の早期発見に努め、見つかれば速やかに投資家に注意喚起し、株式の売買を停止する仕組みも整備しておくべきだ。

 インターネットの普及で、株式売買など金融取引の世界でも電子化が急速に進んでいる。今後も、これまで想定していなかった問題が生じる恐れがある。行政や市場管理者は、その際は必要な措置を遅滞なく講じなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080205-OYT1T00063.htm