ソフトウエア世界最大手の米マイクロソフト(MS)が、インターネット検索世界第2位の米ヤフーに買収を提案した。
IT(情報技術)業界は、革新のスピードが速い。大胆な合併・買収(M&A)の動きは、激しい勝ち残り競争が続く業界の厳しさを浮き彫りにしている。
マイクロソフトの買収金額は、446億ドル(約4兆7500億円)にのぼる。直近の株価を6割も上回る「ヤフー株1株31ドル」という破格の条件は、買収の実現への決意を示す。ニューヨーク市場でヤフー株が急騰したのは、再編への期待もあるからだろう。
ビル・ゲイツ氏らが1975年に創業したマイクロソフトは、IT業界をリードしてきた。パソコンの基本ソフト(OS)で世界の覇権を握る。
しかし、98年に創業された後発のグーグルは、検索サービスと連動したネット広告で急成長し、米国の検索サイトで6割のシェアを占める。95年創業のネット事業の草分けのヤフーは2割にとどまる。マイクロソフトに至っては、1割弱にすぎない。
マイクロソフトはネットビジネスを新たな収益源に育てようとしているが、このままでは、グーグルとの差がさらに拡大するという危機感が強い。
今回の買収提案は、ヤフーを取り込んで巻き返しを図る狙いだ。今夏に経営の一線から退くゲイツ氏にとっては、新たな成長の基盤づくりを急ごうと打って出た大きな賭けである。
マイクロソフトとヤフーは、一昨年から昨年にかけ、経営統合を含む提携を協議したが、ヤフーが応じなかった。
ヤフーが今回、提案を受け入れるかどうかはわからない。だが、最近は、ヤフーの業績が低迷し、人員削減などのリストラも迫られている。こだわってきた独自路線に展望が見えない中で、提案を受諾するとの見方もある。
マイクロソフトとヤフーのネット関連事業の年間売上高を単純に合計すると、約100億ドルに膨らみ、グーグル(165億ドル)と競い合える規模となる。
両者の連合が誕生すれば、研究開発費などのコストの削減効果や、ブランド力を融合した利便性の高いサービスが期待できる。グーグルとの対抗軸ができ、ネットを中心にしたIT業界の勢力図が大きく塗り替わる。
日本のヤフーは検索サービスでリードするが、グーグルも攻勢を強めている。日本国内でも、今後の急成長が見込めるネット広告や、携帯ネット市場を巡り、競争が激化するだろう。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080202-OYT1T00733.htm