中国製の冷凍ギョーザによる薬物中毒事件の解明が足踏みする中、食品業界の関係者が日中両国で対応に追われている。日本国内の検査機関には回収された冷凍ギョーザが次々と持ち込まれ、検査で大忙し。一方、輸入に携わる貿易会社の駐在員らからは、日本人の中国食品離れをひどくしかねない事態に嘆きの声が上がる。
メタミドホスの有無を調べるため、すりつぶされるギョーザ=1日午後、横浜市金沢区の日本冷凍食品検査協会・横浜試験センターで
日本では、各地の食品検査機関に新たな仕事が殺到している。
輸入食品の検査量で国内トップクラスの日本冷凍食品検査協会(本部・東京)は、メーカーや流通業者などからギョーザの農薬の分析依頼をこれまでに100件以上受けた。ギョーザの農薬分析は普段はなく、横浜、神戸の二つの試験センターで対応している。「一時的に忙しくなるが、顧客を待たせないように職員を急がせている」(総務部)
食品環境検査協会(本部・東京)にも全国6カ所の事業所にそれぞれ数十件、食品メーカーなどからの問い合わせが相次いでいる。問題になっている有機リン系農薬のメタミドホスが含まれているかどうかに絞った依頼だが、通常の検体より分析に時間がかかり、結果の証明書を出すには1検体あたり少なくとも3日はかかるという。同協会は「今後、検体が続々届き始めると忙しくなりそうだ」と話す。
大阪市立環境科学研究所には1日までに、保健所が輸入業者から回収した6検体と、市民から回収した12検体が届いた。いずれも製造元の天洋食品廠公司の冷凍ギョーザで、皮と中身、パッケージの袋に分けて調べる。担当者は「ギョーザの分析は想定外。持ち込まれる検体が増えれば態勢強化が必要かもしれない」と言う。
名古屋市衛生研究所には先月31日、天洋食品のギョーザなどを食べて異常を訴えた人たちの食べ残しなど4検体が届いた。検査の結果、メタミドホスは出なかったが、他の農薬が出ないかどうか、2日も検査を続けた。
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日本向け食品の輸出基地の中国・青島。この地で活動する食品検査会社の社長によると、中国では食品安全の問題というより、企業や国家の信用失墜などを狙ったテロ事件として扱われており、「分析依頼が殺到するようなことはない」という。
一方、40代の日系商社マンは先月30日の事件発覚以来、本国の顧客からの問い合わせの回答に追われている。
事件では、混入した原因として「工場内の殺虫剤が紛れ込んだ」など様々な疑いが浮上している。「工場内の殺虫剤の種類や濃度、管理方法や、他の商品のラインで違反農薬を使った野菜を使っていないかなど、確認することが多い」
昨年、養殖ウナギや野菜類の残留薬物問題などを受けて、中国食品を避ける動きが日本で広がった。「回復の兆しがあったが、また大きな影響が出る。他社の駐在員とやけ酒を飲み、愚痴を言い合った」と嘆く。
別の貿易会社の男性も「食材の原材料の産地から工場の出荷まで、総ざらいに近い形で再点検を求められている」と悲鳴を上げる。昨年は売り上げが3〜4割減ったといい、「この先が大変だ」と肩を落とした。 アサヒ・コムトップへ
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