2008年02月01日(金) 18時42分
小さな飲食店経営者から見た「食の完全・安心」(オーマイニュース)
30日夕食時、妻とテレビを見ていた。そこで流れていたのは中国産ギョーザ残留農薬食中毒の報道だった。
「やっぱりねぇ、中国産加工食品はあぶないのよ。ところで、店で使っている食材大丈夫なの?」と妻が言う。
「うちの店のメニューには冷凍食品はないから大丈夫さ」と私は答える。
「でも、冷凍食品以外の中国産の加工食品、使ってないの?」
「基本的には地元で素材を買ってきて、手作りだからなぁ、うちは……。ん? あれ? そういえば、業務用の食材とかあるなぁ」
「そうでしょう。業者に確認とったほうがいいと思うよ」
「ん、そうだなぁ。米国のBSE問題で、一時、牛肉料理の売り上げが落ちたしなぁ。ほんと迷惑だよな、零細な店にとっては」
「ただいま、確認中です」
翌日、現在取引している業者に電話で確認をした。
「おたくの商品を取り寄せている者です。中国のギョーザの事件が報道されていますが、そのほかの商品は大丈夫ですか?」
「はい、弊社では、問題の工場からの輸入はしておりませんので、ご安心ください。もちろん中国産も扱っていますが、ご心配なら、商品ごとに安全証明書を発行します」
「その安全証明書とやらは、どこが発行しているのですか?」
「製造メーカーです」
「製造メーカーって、中国なら中国ということでしょうか」
「そうなります」
続いて、昨年、一時的に商品を取り寄せたことのある業者に電話する。
「そちらから、商品を取り寄せた者です。中国のギョーザの事件ですが、そちらの会社の商品は大丈夫でしょうか?」
「どちらさまでしょうか、お電話番号をおしらせください」
電話番号を伝える。
「はい、渡辺さまですね。その商品は問題ありません」
「今、カタログを見ているのですが、そのほかの商品も大丈夫なのでしょうか」
「ただいま、確認中です。何かありましたら、また、ご連絡ください」
小さな飲食店にとっては、まさに腕の見せ所
日本ではミートホープをはじめ、さまざまな偽装問題があった。製造工場からの加工食品を、再度、検査・確認することは小さな小売業者、あるいは消費者には不可能である。
しかし、食の安全が脅かされている今、製造加工業、または生産者独自の証明を鵜呑(うの)みにして良いものだろうか。
政府が食に対する安心・安全のための検査態勢を強化しなければならないのは言うまでもない。
しかし、政府にすべてを任せるのではなく、民間が自主的に食の安全・安心を実効あるものにする努力も必要だ。そして、この食の「安全・安心」が生産者、および企業の差別化につながると良いだろう。
農業生産業者の生産履歴が消費者に開示され、その情報が小売業、または製造加工業において共有されれば、さらなる食の安全・安心につながる。
この良い事例がヨーロッパで実施されているGAP(適正農業規範)である。GAPについての情報は農林水産省のホームページで開示されている。消費者も一度目を通しておくと良いだろう(関連リンクはこちら)。
農林水産省のホームページによると、最近、中国、タイなども輸出競争力を確保するため、ユーレップ(欧州小売業組合)GAPと同じレベルのGAPの策定・取り組みを積極的に進めているとある。
しかし、今回の中国産ギョーザ中毒事件において、中国の農業生産工程の現状や、食品加工業の安全面、または、そこで働く人の労働条件や安心・安全に対する認識などを、輸入販売業者がどれほど把握していたのか疑問だ。ただ単にコスト削減のため、安全・安心をないがしろにしていたのであれば、モラルの低下以外の何者でもない。
食品の安全・安心は生産から加工、運搬、販売とトータルに考えなくてはならない。
また、食の安全・安心の確保は生産者や加工業者だけが負うのもではない。消費者もそれを持続可能なものにしていくため、文句は言いながらも安いものを買うという姿勢ではだめである。責任ある生産履歴の情報を開示することにより、消費者も責任ある選択をできる時代になるだろう。
また、食料自給率が40%を切った、わが国の現状を考えると、食料自給率の向上も考えなければならない。国際競争においては、安心・安全な農産物の生産が、よりいっそう必要になるだろう。
食品の生産履歴を開示し、いかに、食の安全・安心を実施しているかを示す。それによって、飲食店が淘汰(とうた)されていくのであれば、小さな店においては、狭い範囲の価格競争などはやめ、味で勝負することが求められるのではないか。まさに腕の見せ所といったところである。
以上のようなことを妻に伝えたら、「お父さん、大丈夫? あんたの腕で」という言葉が返ってきた。
(記者:渡辺 良一)
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