2008年02月01日(金) 21時17分
毒ギョーザで消費者の冷凍食品、中国離れ拡大(産経新聞)
中国製ギョーザによる中毒事件は、“食の安全”に対する消費者の危機意識を改めて呼び覚ました。「安心できない食品は買わない」という消費者の反応に配慮して、流通現場では食品メーカーが自主回収を決めた商品以外の冷凍食品、中国産の野菜や果物まで店頭から撤去する動きが拡大。関連業界には、「混乱が長引くと業績にも深刻な影響が出る」(食品業界)との不安感さえ漂っている。
「今は(消費者の)不信を買って非常に悪い状態にあるが、(今後も)より落ち込むと思う」
4月にJT、加ト吉と冷凍食品事業の統合を計画している日清食品の安藤宏基社長は、1日、東京本社で開いた記者懇談会で、こんな言葉で消費者の買い控えの広がりに強い懸念を示した。
会社創立50周年を機に東京で初めて開いた懇談会だったが、当然ながら、記者の質問は中毒事件に集中した。
日本の冷凍食品市場(出荷ベース)は年1兆円規模。ここ数年、前年比2〜3%で伸びている数少ない成長市場だ。ただ、昨年は「偽装冷凍コロッケ」のミートホープ事件、中国の「段ボール肉まん」問題などで高まった食品不信のあおりで、上期の売上高がマイナスに転じる“悪夢”も経験した。
しかし、今回の問題には「健康被害が出ている以上、消費者は慎重になる」(ニチレイ)との厳しい見方が大勢を占め、その影響は比較にならないほど大きい。
自主回収でスーパーの冷凍食品売り場では商品もまばらな光景が見受けられ、「客足が減って寂しい限り」(売り場担当者)だ。騒ぎがエスカレートすれば、問題の商品とは無関係の食品からも消費者が離れかねない。
実際、大丸と松坂屋は1日までに、メーカーが自主回収を決めた以外の中国製冷凍商品、中国産の野菜や果物を店頭から撤去した。両社の持ち株会社であるJ・フロントリテイリングは「お客さまの不安もあり、安全を第一に考えた」(広報IR室)という。三越も中国製の冷凍ギョーザや、冷凍シュウマイなどを撤去。西武百貨店とそごうも中国で加工された野菜などで正式な証明がついていない場合は使用を控えることを決めた。
イトーヨーカ堂などを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは2日、仕入れ、品質管理担当者を中国に派遣する。取引がある農場や加工工場の品質管理態勢を再確認するためで、「これまでも現地で品質を確認した上で仕入れているが、やるべきことはやっておきたい」という。
ジャスコを展開するイオンは1日までに、自主開発商品の製造を委託する中国の工場16カ所に立ち入り検査し、品質管理や労働者の福利厚生などもチェックした。
原因が特定されていないこともあって、流通業界は中国産食品すべての販売中止には否定的。その背景には、国産品より安価で、品ぞろえの観点からも不可欠の中国産商品がないと「棚ががらがらになる」(スーパー幹部)という現実がある。
相次ぐ値上げなどで生活防衛意識が高まる中、これ以上、消費意欲の低迷を招く最悪の事態は避けたいところ。ある食品スーパーの担当者は「たとえ安全でも、結果として売れなければ、中国産は置けない」とため息をもらした。
客足が遠のく事態が長期化すれば、関連業界の業績には深刻な影響が及ぶ。メーカー側の商品回収費用、減収見通しなどは明らかになっていないが、「騒ぎが長期化すれば業界全体で軽く2000億円を超す減収に陥る」との指摘がある。
特売対象となる冷凍食品は“薄利多売”が常態化し、メーカーの実質的な利益率は1〜2%とされ、「経営体力の弱い中小メーカーは淘汰(とうた)される」(業界関係者)との危機感も広がっている。
流通各社も正確な影響は把握していないが、イトーヨーカ堂では30日以降、冷凍食品の販売に「多少の影響が出ている」。関東地盤のスーパー、サミットも「売り上げは間違いなく落ちている」と話す。
昨年夏、米国で中国産ウナギから使用禁止の抗菌剤が検出された際は、日本のスーパーやコンビニの一部で3割近く売り上げを落としたケースがあった。今回の中毒事件も、“食の安全”に対する消費者の危機感をさらに高めそうだ。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080201-00000954-san-bus_all