「通常の食品製造過程では起こりえない」。深刻な健康被害を受けた人が食べたギョーザと有機リン系毒物をめぐり、化学物質や食品加工に詳しい研究者らは混入の経緯や経路に首をかしげる。
被害者の嘔吐(おうと)物のギョーザや包装から検出されたメタミドホスは、常温では無色の結晶で、水によく溶ける有機リン系の物質。国内では農薬としての登録がなく使用は禁じられているが、海外では農薬や殺虫剤として使われている。
農林水産省農薬対策室によると、農薬の国際的な安全性評価では、メタミドホスを一度に摂取した場合に健康に大きな影響を与えないとされる上限は体重1キロ当たり0.01ミリグラム。体重60キロの人間だと0.6ミリグラムとなる。
昭和大薬学部の吉田武美教授(毒物学)は「今回の症状から考える限り、残留農薬の基準をちょっと超えた程度ではなく、相当量含まれていたのではないか」。
化学性の中毒に詳しい東京聖栄大食品学科の真木俊夫准教授(毒物学)によると、食品を通した有機リン系毒物による健康被害はきわめてまれ。「ギョーザであれば加熱により有害物質はある程度、分解されたはず。それでも重体者が出たことから、相当高濃度だったことが考えられる」と指摘する。
混入の経緯について「ギョーザの具や皮の原材料に残留農薬があったとしても、ここまでの影響は考えにくい」といい、兵庫県警などの調査でメタミドホスが包装物からも出ていることを挙げ「工場での製造の過程で混入した可能性が高いのではないか」と話す。
農水省の農業資材審議会会長を務める千葉大大学院園芸学研究科の本山直樹教授(農薬毒性学)は「最近は中国でも日本に輸出する生野菜の残留農薬を栽培段階から二重、三重のチェックをしていると聞いているが、加工食品については不十分だった可能性がある」とみる。 アサヒ・コムトップへ
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