2008年01月30日(水) 12時59分
ネット心中直前で“引き返した”男性(2)──自殺衝動を抑えきれずに、サイトにアクセス(オーマイニュース)
「この年まで生きていれば、1度や2度は、『死んでしまいたい』と思うことはあると思います。しかし、普通は、何らかの理由で自分を押しとどめるんです」
50代の会社員O氏は、ネット心中した住所不定の男性(44)と大阪府内の女性(22)と、直前まで行動を共にしていたが、その行動記録を、私と会う前に、メールで私に知らせていた。そこには、行動、心情、人間関係が詳細に記されていた。
O氏の話を聞いたのは、池袋のカラオケボックス内。周囲がざわついている中で、丁寧に話してくれた。この時は自分の行動や心情を冷静に分析していて、自殺衝動がないことがわかった。
そして、過去にも自殺を考えたこともあるが、「押しとどめてきた理由」について話し始めた。
「ひとつの理由は、仕事で関わっている人たちに精神的なご迷惑をおかけすることです。私を信頼してくれる人がいたとして、『あいつはそういう奴だったのか』と思われる、のではなく、思わせてしまうのはすごく失礼。また、仕事そのものが壊れてしまうだろうと思うわけです。ビジネスの信頼関係を築くまでに年月もお金もかかってる。有形のものも無形のものもある。そういうことはできない」
「もうひとつの理由としては、もし命が絶たれるとして、逃げる、ではなく、命を懸けるなかでなら、かまわないと思っていました。今の日本では、他人のために命を落とすのは難しい。だから、ここ数年は過労死は憧れました。だからよく『お前、いつ寝ているんだ?』と言われていました」
しかし、O氏は自殺衝動を抑えることができなくなっていた。
「ところが、自分のだらしない面、どうしようもないことがある。それらに嫌気がさして、2007年12月7日の段階で一瞬、一線を超えたんです。そのときの精神状態は分析不能です。もし、今後、死にたい気持ちが出てきたとしても、今回のように、“逃げる形”ではないと思います」
定期的に「死にたい」という衝動がこれまでにもあったというO氏。なぜ、この時期に、インターネットで自殺仲間を見つけるほどの衝動が襲ってきたのだろうか。
「いくつかのパンチが飛んできたんでしょうね。大きなパンチではなく、小さなパンチがいくつか飛んできたのかもしれません。今のところ、そのパンチの中身は曖昧にしたい。あえていえば、仕事上などのプレッシャーですね。仕事は好きです。働き過ぎがプレッシャーにはならないです。今回に関しては、『あいつはそういう奴だったのか』と思われてもよかったから、逃げたくなったんです。それまでの自殺願望と違っていたんでしょう。自殺系サイトを覗いたのも初めてです」
「仕事上など」とわざわざ「など」を付けて話しているのが気になった私は、家族のことを聞いてみた。家族とは別居状態だという。
「家族とは3年ほど別居状態です。別居して以来、子どもには1回だけ(妻に)合意で会いました。内緒でも2回会いました。こういう気持ち(=自殺を考えること)になっていくひとつの要因にはなったかもしれませんが。しかし、今回の自殺衝動に関しては、直接は関係ないと思います」
では、ひとり暮らしの孤独感はあったのだろうか。
「まったくありません。仕事上の関係を含め、友人関係は広いです。若い人もいます。若いと言っても、渋井さんくらいですが」
こうした気持ちが襲ってきた中で、O氏が望む「車(レンタカーをのぞく)」「練炭」「睡眠薬」を持っていた名古屋の男性と会う約束をした。しかし、結果的に会えなかった。電話で会話もしたが、最終的に相手は計画中止を告げてきた。名古屋の男性は決行メンバーから外れた。
(つづく)
(記者:渋井 哲也)
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