中国製冷凍ギョーザによる食中毒問題は、行政機関が事態を見極められない間に被害が広がっていた。
兵庫県などによると、病院に運ばれた同県高砂市の家族３人が毒物中毒症状を起こしているとの一報が県に入ったのは、６日午前１１時ごろ。県は翌７日にジェイティフーズを管轄する東京都に報告したが、公表はせず、販売店や消費者への注意喚起もしなかった。
県生活衛生課の担当者は「当初、国内で誰かが故意に混入した事件性の高い事案と判断し、県警の捜査を優先させるべきだと考えた。公表には慎重にならざるを得なかった」と説明する。
兵庫県から連絡を受けた都は品川区に調査を求め、区が同社に聞き取りをしたが、健康被害の報告は他になかった。都は「製品自体の問題だと断定できない」などとして公表を見送ったという。
兵庫県が千葉県でも同様の事例があったことを把握したのは２９日。メタミドホスが検出されたと兵庫県警から同日の検査結果を聞いた際だったという。県生活衛生課の担当者は「メタミドホスは登録外農薬で、国内で混入した可能性は低い。他県で同様の事例があるなら、県内で被害が広がる恐れもあるため、厚生労働省の指導の上で３０日に発表することにした」と話した。
都も２９日夕、千葉県から「冷凍ギョーザを食べた５人が有機リン系中毒とみられる症状を訴えた」と連絡があり、３０日午前、同社への立ち入り調査を実施した。
都福祉保健局は「７日時点で調査していれば、市川のケースは防げたかもしれない」と語る。
コープを統括する日本生協連合会は、２５日に事態を把握しながら公表はせず、店から撤去したのは４日後の２９日だった。
捜査当局は２９日まで別々に捜査していた。
千葉県警が殺人未遂容疑で捜査を始めたのは今月２３日。病院から通報があった。メタミドホス検出の鑑定結果を得たのは２９日だった。
高砂市の親子が入院した翌日に通報を受けた兵庫県警が同様の鑑定結果を得たのも２９日。両県警が同じ化学薬品工場に問い合わせたことから、両県の事件がつながった。
■発生から公表までの経緯
０７年１２月２８日 千葉市の母子２人が入院、通院
０８年 １月 ５日 兵庫県高砂市の家族３人が入院
６日 同県警が殺人未遂容疑で千葉市との関連
を捜査。同県は「事件性がある」として
公表せず、翌７日に東京都に調査を依頼
２２日 千葉県市川市の家族５人が入院し、同県
警が捜査を始める
２９日 兵庫、千葉両県警がそれぞれ実施した鑑
定で有機リン系農薬「メタミドホス」を
検出。警察庁が厚労省に通報
３０日 都の立ち入り調査を受けたジェイティフ
ーズが自主回収を公表