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2008年01月29日(火) 08時01分

地下銀行 好調鉄くず輸出悪用 中国に24億不正送金 94企業関与産経新聞

 中国人グループが日本から中国に違法に送金する「地下銀行」を全国規模で営んでいた事件で、警視庁と宮城、神奈川、宮崎各県警の合同捜査本部は28日、銀行法違反の疑いで7都府県の金属加工貿易会社など7社を家宅捜索した。グループは北京五輪を控え、需要が多く取引の活発な鉄くずの輸出を悪用して送金を繰り返していた。7社を含め国内94の企業が関与しており、これほど多数の企業が関与していたのは異例で、合同捜査本部はグループの全容解明を進める。

 ■蛇頭メンバー

 合同捜査本部はこれまでに銀行法違反(無許可営業)などの疑いで、犯行グループの中国人ら15人を逮捕した。この中には銀行口座を提供していた日本人の男3人も含まれる。

 調べでは、このなかには、銀行口座を提供していた日本人の男3人も含まれる。犯行グループは平成14年7月から昨年9月までの間、国内滞在の中国人の送金依頼を受け、銀行業の許可がないのに中国の指定先に不正送金した疑い。利用者は延べ4180人で送金額は約24億円にのぼる。

 グループが営んでいた地下銀行は、国内では「神奈川」「千葉」の2つの組織があり、「神奈川グループ」の首謀者で横浜市に住む中国籍の男(35)=銀行法違反の罪で懲役4年=は逮捕された。一方の「千葉グループ」の主犯格の男(31)は、昨年11月に神戸港から中国へ逃亡している。

 逮捕者の供述から、2グループを統括していたのは、中国・福建省在住の30代の「老板(ラオパン)」と呼ばれる男であることが判明。男は密航あっせん組織「蛇頭」のメンバーで、昨年2月まで日本に住んでいたという。

 ■五輪控え高騰

 過去に摘発された地下銀行では、客から預かった現金を犯行グループが現地に運び、送金指定先に手渡すのが一般的だった。だが、今回摘発された中国人グループの不正送金は、日中間の鉄くず取引を悪用して送金していたのが特徴だ。流れはこうだ。

 まず、日本国内の依頼人からグループが預かった現金は、「鉄くず代金の一部」として、日本の金属輸出業者に振り込まれる。この業者から鉄くずを購入した中国側企業は、代金の一部しか日本企業に支払わず、残金を犯行グループの中国側の組織に渡す。中国側組織は残金を“プール金”としてため、中国の受取人に手渡していた。

 北京五輪を控え、中国では鉄くずが高騰しており、「日本からの輸出が急増していることに目をつけ、不正送金を紛れ込ませていた」(警視庁幹部)。鉄の輸出回数が増えれば、それだけ不正送金も頻繁に行えるメリットがあったとされる。

 ■日本人社長も

 送金に関与していた国内の金属輸出業者は、東京都や宮城県など日本全国の94社。大半は中国人がオーナーだが、日本人や韓国人が社長を務めている会社もある。

 これまでも通常の商取引を利用し海外へ不正送金するケースはあったが、「100近い国内企業が関与していたのは異例」(捜査幹部)。捜索を受けたのは、特にグループからの入金額が多かった7社で、最大で総額約16億円の入金を受けていた。

 合同捜査本部は7社が不正送金に取引が悪用されていることを把握していたとみて会社関係者らから事情を聴くとともに、押収した資料を分析し、ほかの企業についても不正送金への関与の度合いを調べる。


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