2008年01月29日(火) 12時02分
ミートホープ:牛ミンチ偽装 冒頭陳述要旨 /北海道(毎日新聞)
不正競争防止法違反(虚偽表示)と詐欺の罪に問われたミートホープ元社長、田中稔被告(69)の初公判での検察側冒頭陳述の要旨は次の通り。
■犯行に至る経緯及び犯行状況等
【経緯】
(設立当初)
被告は、ミート社の設立当初から、代表取締役に就任、全株式を被告とその家族で独占した。
設立から数年後には、利益を上げるため、時折、牛肉に他の動物の肉を混ぜたひき肉を牛ひき肉として自衛隊に納品。また、外国産の鶏肉や豚肉を国産品として学校給食用に納品するようになった。
(90年ごろ)
さらに90年ごろからはミート社の利益を上げようと、取引先を焼き肉店からコロッケ製造などで大量の牛ひき肉を使う食品加工会社に転換。新たに営業社員を雇い、取引先を拡大させた。
(96年ごろ)
96年ごろには、取引先に他の動物の肉を混ぜていることを隠し、「ミートホープは北海道では大きな食肉加工業者なので格安の牛肉を手に入れることができる。加工過程で大量に出る牛肉の切れ端を活用して原価を抑えている」などと説明。製品が牛の正肉のみで製造されているよう信じさせて取引を承諾させた。
また、本社工場に勤務する従業員で「ひき肉班」を構成し、牛の血液製剤で赤みを付けてひいたものを製造。配合の具合や手順などを具体的に指示し、「牛ひき肉」と偽っても平気かどうかを自分で確認してから販売するようになり、ミートホープのひき肉販売の利益を増やしていった。
(00年ごろ)
クレームが相次いだ00年ごろからは、原料を2度ひくことで異物を砕き、見た目をごまかすことに決めた。02年ごろからは「ダイヤカット」と称する方法でカット肉を製造し、他の動物の肉を混ぜたものを「牛肉ダイヤカット」と称して販売するようになった。
【売り上げ】
このような事業展開によって、ミートホープの売り上げは、03年3月期が約14億3700万円、04年3月期が約13億8200万円、05年3月期が約14億6400万円、06年3月期が約16億4500万円、07年3月期が約16億4000万円となった。
原料を偽ったひき肉とカット肉による売り上げは、全体の約15%にあたる約2億5000万円程度だったが、ミート社の他の商品の粗利益は約3割にとどまる一方、偽装した牛ひき肉とカット肉の粗利益は約7割に上った。
ミート社は北海道加ト吉が大口の取引先のひとつだったが、同社はミート社から購入するひき肉の衛生・品質管理に厳しく、しばしば抜き打ちで来訪した。同社の工場長が来訪した際には、直ちに汐見工場の従業員に連絡を入れ、「加ト吉が来るから、心臓とザッパ、2度びきをしまっとけ」などと言って牛肉以外の肉などを隠すよう指示し、犯行の発覚を防いだ。
【指示の実態】
ミート社でひき肉に赤みを付けるため使用していた牛の血液製剤が06年ごろから入手困難になり、被告は代替物として豚の血液製剤を使うようになった。
ミート社の費用を徹底的に削減してさらに利益を上げるため、全従業員参加の朝礼を毎日のように開き、「水道の使用量が昨日より多い。水道を使いすぎているからだ。掃除や解凍には、もっと雨水を利用しろ」などと言って、工場に貯めている雨水で原料を解凍するよう指示するなどした。また、毎日のように班長会議を開き、当日の作業内容を確認し、業務内容を指示。汐見工場の従業員に対し、ひき肉に混ぜる肉の配合具合を具体的に指示したり、自ら豚の心臓を機械に投入するなどし、偽装したひき肉を取引先に販売した。
【隠ぺい工作】
被告は、ミート社が豚の心臓を大量に仕入れているのに、これに見合った販売実績がなかったことから、仕入れと販売を比較されることで犯行が発覚することを恐れ、06年10月ごろ、仕入れ先業者に対し、それまで「豚心臓」と表示していた豚の心臓について「豚焼き材赤」と表示するよう依頼。ミート社が豚の心臓を大量に仕入れている事実を隠し、犯行発覚を防いだ。
被告は、07年5月、偽装の牛ひき肉を作るのはやめようなどと一度は言ってみたものの、結局、在庫原料の都合を優先させ、犯行の継続を指示した。
■犯行発覚の状況等
犯行は07年6月20日に発覚したが、被告は長年にわたる犯罪ではないかのように装い、取引先には、社内調査によって牛ひき肉に豚肉が混入していたことを確認したとの虚偽の謝罪文をミート社代表取締役名義で交付。在庫の心臓などを仕入れ先業者に運び込むなどして証拠隠滅をはかった。さらに、従業員に責任を転嫁するような発言をしたが、同月24日、強制捜査を受けた。
■犯行による利得等
一連の犯行による利益はミート社の売り上げとなり、被告ら役員と従業員の報酬などに使われた。被告はミート社代表取締役として年間2040万円の役員報酬を得て、取締役の妻には年間1440万円の役員報酬を与えた。さらに、長男と次男がそれぞれ経営する系列会社に課された重加算税の支払いに充てるため、妻を06年3月に退職させ、退職金として約8000万円を与えた。三男には03年3月期以降は年間1800万円の役員報酬を与えた。
1月29日朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080129-00000019-mailo-hok