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2008年01月28日(月) 03時00分

メディア縦横、橋下流 芸能プロ活用 大阪知事選朝日新聞

 大阪府民が27日、全国初の女性知事の後に選んだ「ナニワの顔」は、全国最年少知事となる橋下徹氏だった。過激な発言を売りにする異色の弁護士が選ばれた背景には、タレントでもある橋下氏のしたたかな選挙戦術があった。選挙戦を通じて、これまでの府政に厳しい意見を浴びせてきた橋下氏。府庁内には早くも警戒感が広がっている。

万歳をする支持者らに囲まれながら、鯛を差し上げる橋下徹さん=27日午後9時13分、大阪市中央区で

 「一から大阪を立て直したい」。27日午後9時前、橋下氏は支援者にもみくちゃにされながら、大阪市中央区の事務所に設けられたステージに立った。府立北野高校ラグビー部時代の仲間や自民、公明両党の国会議員らに囲まれて万歳。あいさつの途中、目に涙を浮かべ、言葉に詰まると「がんばれー」と支援者から大きな声が飛んだ。

 報道陣の質問に対し、「(公約の実現に向け)かなりハードにやる。やり抜きます」「なれあいではないから、府議会のみなさんとは是々非々で、激論していく」と顔を紅潮させながら言い切った。

 ステージを囲むようにテレビ局や新聞社、女性週刊誌のカメラ約60台が並んだ。支援者ら数十人に対して報道陣は約200人にのぼり、事務所内は満員電車並みの混雑。自民党のベテラン衆院議員は「これだけマスコミが集まった選挙は見たことがない」。橋下氏の相談役を務めた自民党衆院議員は「やっと大阪から全国に情報発信できる知事を得た。これからしっかり政策を勉強してほしい」と語った。

 橋下氏は、タレントのやしきたかじんさんから届けられた大きな鯛(たい)を手に万歳を繰り返した。

 午後9時半すぎには大阪市の平松邦夫市長が事務所を訪れ、橋下氏と握手して当選を祝った。

 当選後の約24時間で約40のメディアから取材を受ける。28日午前0時半〜4時すぎまで在阪メディア14社の個別取材に応じ、同6時前からテレビとラジオに生出演。同7時前〜9時にかけて東京の民放キー局も含めたニュースやワイドショーなど9番組に登場——。

 こうしたスケジュールを管理し、橋下氏の選挙を中枢で支えたのは芸能プロダクション「タイタン」(東京・杉並)だ。漫才コンビ「爆笑問題」が所属し、橋下氏が業務委託契約を結んでいる。

 選挙期間中、橋下氏の日程表は前日夜にスポーツ紙や週刊誌、在京キー局なども含め、最大約40社にファクスで送られていた。「爆笑問題」のマネジャーも務める選挙統括本部長の劉昇一朗(りゅう・しょういちろう)さん(43)は「一般紙は選挙報道でバランスをとるが、スポーツ紙や夕刊紙はそうじゃないと計算した」。

 橋下氏が提唱する「小学校校庭の芝生化」にスポットをあてるため、小学校で橋下氏と子どもたちに鬼ごっこさせるなど「絵」になる場面も演出し続けた。

 その一方で、タレントからの応援は一切断った。陣営幹部は「好き放題言っていたタレント時代と違う。当時の橋下を思い起こさせるタレントの応援弁士は逆効果と考えた」と打ち明ける。

 ただ、橋下氏が選挙戦でしばしば挙げたのは宮崎県の東国原英夫知事の名前だ。「タレントで活躍していた方が政治の世界で成功しているのは大変参考になる」。東国原知事が最終日に橋下氏の応援をしたのは例外扱いだった。

 陣営幹部は「勝因は空中戦と地上戦の二正面作戦」と振り返る。街頭では自民、公明の議員がマイクを握らずひたすら政党色を薄め、個人演説会などでは議員が後援会員を動員して、組織票を積み上げていった。

 どこでも黒山の人だかりができる「橋下人気」は、衆院の解散・総選挙を控え、自民、公明には大きな魅力だ。「次は自分の選挙で橋下知事が応援してくれる」(自民党衆院議員)との下心ものぞく。

 正式に知事に就任するのは2月6日の予定だ。知事のメディア対応を担う大阪府広報報道課は、すでに東京事務所を通じて宮崎県のノウハウについて情報を集めている。メディアの取材は故・横山ノック元知事の初当選の時よりも過熱しているという。同課職員は「府にはすべてのメディアをさばくノウハウはない。タイタンに相談するケースも出てくるかもしれない」と話す。

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