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2008年01月18日(金) 02時50分

米メリル、1・7兆円の損失 証券信用不安、底見えず朝日新聞

 米証券大手メリルリンチが17日、07年第4四半期(10〜12月期)決算を発表し、当期損益が前年同期の23億4600万ドル(約2500億円)の黒字から98億3300万ドル(約1兆500億円)の赤字に転落したと発表した。米低所得者向け(サブプライム)住宅ローン関連の評価損など追加損失を158億ドル(約1兆6900億円)計上したのが響いた。これで米金融大手10社の第4四半期の損失総額は、第3四半期の倍の600億ドル超に膨らむ見込みになった。

 メリルリンチの当期赤字は15日発表した最大手シティグループと同額で、大手10社の中では最大。メリルリンチは第3四半期(7〜9月期)決算も赤字で、大手10社の中では唯一、2四半期続けて赤字に落ち込んだ。10〜12月期の損失は、サブプライムに直接からむものが141億ドルで、商業用不動産や企業向け融資の評価損なども加えると計158億ドルにのぼった。前四半期と合わせた半年間の損失は計約242億ドルとなり、大手10社ではシティグループに次ぐ規模となる。

 22日に発表を予定している銀行大手のバンク・オブ・アメリカとワコビアで、米金融大手10社の第4四半期決算が出そろう。サブプライム関連の評価損について、バンク・オブ・アメリカは約30億ドル、ワコビアは最大17億ドルをそれぞれ計上する見通しだと昨年発表している。両社の損失予想を含む計10社の損失は合計で600億ドルを超え、約300億ドルだった第3四半期から倍増する。

 損失額が際立ったのはシティグループだ。同社は10〜12月期決算で、サブプライムローンの証券化商品などの評価損181億ドルや米国内の個人向け融資の焦げ付きなどで222億ドルの損失を被ったと発表。米国外の個人向け融資の貸し倒れ損失などを加えると損失は計235億ドルにのぼった。7〜9月期の損失約67億ドルの3倍以上に急増し、半年間の損失総額は303億ドルに達した。

 証券大手モルガン・スタンレーも、損失が第3四半期の7倍近くまで膨れあがった。第3四半期では10社の中で最大の損失約84億ドルを計上したメリルリンチも急増した。

 損失額が拡大したのは、信用不安が長引いて証券化市場が冷え込み、値下がりした証券化商品を売ろうにも売却先が見つからない状態が深刻化したためだ。だが、これで「底打ち」とはいかないとの見方が多い。

 「事業環境の不透明さは日を追うごとに深まっている」。16日に10〜12月期決算を発表したJPモルガン・チェースのジェームズ・ディモン会長兼最高経営責任者(CEO)は電話会見でこう語った。今後の見通しについて「景気後退を予想はしていないが、それも想定して可能な限り準備をしている」(ディモンCEO)と慎重だ。

 景気が悪化すれば、住宅ローンばかりか、米銀が収益源としているクレジットカード業務などにも返済の遅延が広がりかねない。中小企業向け融資などにも悪影響が出て、貸し倒れ損失が急増する恐れもある。

 巨額損失の計上に踏み切ったシティグループでも、先行きの見通しは明るくない。

 「今年前半も厳しい状況で、リスクを注視し続けなければならない」。15日の決算発表後の電話会見で、同社のゲイリー・クリッテンデン最高財務責任者(CFO)は気を引き締める。損失拡大の元凶とされるサブプライムローンなどを担保にした債務担保証券(CDO)などの市場は「劇的に縮小し、再び収益を上げられるようになると楽観的にはなれない」といい、「V字回復」への展望は描けない。 アサヒ・コムトップへ

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