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2008年01月13日(日) 01時43分

肝炎救済法成立 薬害根絶へまだまだ課題は多い(1月13日付・読売社説)読売新聞

 これで肝炎問題のすべてが決着するわけではない。

 血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染した被害者の救済法が成立した。衆院に議員提案されてから4日後に成立という異例の速さだ。18日にも施行される。

 被害者を一律救済するという福田首相の政治決断から、事態は一気に動いた。2002年に提訴された薬害C型肝炎訴訟は、原告と国の間で、近く和解が成立する見通しだ。

 フィブリノゲンなどが投与されたと、裁判所が認定した被害者に対し、症状に応じて1200万〜4000万円を給付する。対象者は約1000人、給付総額は200億円余とみられる。

 給付金は、国と製薬会社で作る基金から拠出するが、対応を明確にしていない製薬会社もある。薬害を発生させた一義的な責任は、製薬会社にある。当然、応分の負担は避けられまい。

 救済法は成立したが、対象となるのは、国内で350万人とされるB型、C型のウイルス性肝炎患者・感染者のごく一部に過ぎない。

 肝炎の医療体制の充実が、今後の最大の課題である。

 肝炎の感染経路は様々だ。血液製剤のほか、予防接種での注射器の使い回しや、輸血などで感染が広がり、「国民病」といわれるまでに蔓延(まんえん)した。

 最高裁は06年、予防接種の際のB型肝炎の感染防止策を怠ったとして、国に賠償を命じた。国が適切な対策を怠ったことが、肝炎の感染拡大の一因になっていることは、明らかだ。

 厚生労働省は、今春から7年計画で、月7〜8万円の自己負担が必要とされるインターフェロン治療の助成策を始める方針だ。年間10万人、計70万人が対象になるという。民主党も同様の治療費助成法案を参院に提出している。

 与野党で調整を急ぎ、助成策を早期に実施すべきである。

 スモン、サリドマイド、エイズ、C型肝炎など、薬害が繰り返されている。

 医薬品に、ある程度の副作用は付きものともいえる。だが、医薬品の有効性以上に、副作用が重篤であれば、使用規制などの措置を講じる必要がある。

 厚労省には、医療機関や製薬会社から年間3万件ほどの副作用情報が寄せられる。それらの正確な分析が、まずは重要だ。さらに、重要な情報があった場合には、即座に医療機関に注意を呼びかける迅速な対応が何より大切である。

 厚労省は体制を再点検し、今度こそ、薬害を根絶せねばならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080112ig90.htm