企業体質に問題があるのではないか。日雇い派遣大手のグッドウィルが厚生労働省から事業停止命令を受けた。
危険業務だとして労働者派遣法で禁じられた港湾運送や建設業務に派遣していた。派遣先企業が別の企業に派遣労働者を送り込む二重派遣もしていた。これも、事故が起きた際に責任の所在があいまいになるとして、職業安定法で禁止された行為だ。
全708支店のうち、法令違反をした67支店は4か月、他の支店も2か月の事業停止という厳しい内容である。改善命令を受けていながら、その後も大規模な違反を繰り返していたからだ。
製造業への派遣が可能となるなど派遣労働の規制緩和を追い風に、グッドウィルは4年前に設立された。わずかの間に約290万人の派遣登録者を抱え、「業界最大の全国ネットワーク」を持つまでに急成長したが、その裏で違法行為がまかり通っていたことになる。
同じグループの、訪問介護のコムスンも昨年6月、事業所指定の不正取得で処分されたばかりだ。
グッドウィルは毎日3万人以上を派遣していただけに、今回の事業停止処分で多くの人が仕事を失う恐れがある。日雇い派遣業界全体で、就労先の確保に取り組む必要がある。
企業からの要請で、派遣会社が携帯電話やメールで登録者に連絡し、派遣するのが日雇い派遣だ。スポット派遣とも呼ばれる。繁忙期などの「雇用の調整弁」として、企業の需要は多い。
派遣会社は、派遣労働者の就労内容や就労場所を把握し、派遣先に対しても法令を守らせる義務を負う。グッドウィルの管理は、あまりにずさんだった。
同時に、現場で仕事の指示をしていたのは派遣先の企業である。臨時的雇用だからと安易に考え、平気で法令を無視するような空気が、派遣元にも派遣先にもあったのではないか。
日雇い派遣では、大手のフルキャストも昨年、違法派遣をしたとして事業停止命令を受けている。派遣先とも協力し、業界が一体となって制度の透明化と健全化に努めなければならない。
日雇い派遣が新たな貧困層を生み出しているとの指摘がある。一方で、こうした働き方を望む人も少なくない。
厚労省の労働政策審議会でも制度のあり方について論議している。補助的な収入を得るには便利な働き方だが、長期的に家計を維持していくことが難しいことは確かだ。日雇い派遣の実態を十分に把握したうえで、どのような見直しが最善か、検討を急いでもらいたい。