2008年01月13日(日) 22時28分
<佐世保乱射>事件1カ月…動機解明遠く、子どもの心に傷(毎日新聞)
長崎県佐世保市のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」で昨年12月に起きた散弾銃乱射事件から14日で1カ月。クラブの水泳コーチ、倉本舞衣さん(当時26歳)ら2人が死亡、小学生2人を含む6人が重軽傷を負った凶悪事件は多くの関係者の心に深い傷を残した。県警は自殺した馬込政義容疑者(同37歳)の動機解明に全力を挙げているが、有力な手がかりはなく、全容解明には至っていない。【近松仁太郎】
「最初にパンという小さい音。次にバーンという大きな音がして銃声とわかった」
自らもクラブ会員で事件発生時、クラブ3階にいた海上自衛隊佐世保基地の幹部の男性(54)が振り返る。
吹き抜けの窓から2階のプールを見下ろすと、迷彩服姿で銃を構え、プールサイドを小走りする馬込容疑者の姿が見えた。銃口の先から赤いレーザー光線が伸びていた。「命中精度を高める赤外線照準装置だと思った。走り方も、目的があって迷いなく向かって行く感じだった」という。
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事件翌日に市が設置した「心の相談窓口」には10日までに109件の相談があった。担当者は「窓口を閉鎖する時期は見えない」。強いストレスや食欲不振、不眠を訴える声は関係者の中に年齢を問わずあり、惨劇の記憶が突然よみがえる「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)に悩む人も少なくない。
事件に遭遇した子供の母親は県警に「子供に何と話しかければいいのか、今もわからない」と訴えた。子供が口を閉ざしたままで、何を見聞きしたかわからないからだ。県警幹部は「『この子は銃撃現場から離れていたから撃たれる様子は見ていない』などと(客観的に)説明できるのは警察だけ」と話し、関係者に対して事情を聴くだけでなく、心理的負担を軽減することにも努めているという。
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県警の調べで、事件当時の現場の状況はかなり明らかになってきた。最初に射殺された倉本さんは、プールにいた子供たちの安全を最優先に考え、子供らの背中を押すようにして先に避難させようとしていたことが目撃者の証言で分かった。また、もう一人の犠牲者で馬込容疑者の同級生だった漁具製造業、藤本勇司さん(当時36歳)は、犯行を制止しようと両手を大きく広げるようにして撃たれたことも判明した。
一方、倉本さんに強い関心を寄せていたとみられる馬込容疑者だが、遺書はなく、パソコン、携帯電話からも倉本さんに関する書き込みは見つからず、動機をうかがわせるような物証は出てきていない。県警は関係者への事情聴取を続け、全容解明を目指している。遅くとも2月には馬込容疑者を殺人などの容疑で、被疑者死亡のまま書類送検する方針だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080113-00000073-mai-soci