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2008年01月11日(金) 02時34分

<裁判員制度>起訴状の難解用語を言い換え 東京地検が試み毎日新聞

 「手拳で殴打した」は「げんこつで殴った」と言い換えます−−。長年、起訴状に使われてきた難解な言い回しを分かりやすい言葉に改める試みを東京地検が始めた。重大な刑事裁判の審理に市民が参加する裁判員制度が来春スタートするのを前に、「耳で聞いて分かる起訴状」にすることを目指している。

 起訴状で使う用語に特別な決まりはない。だが各検事が過去の例を参考に作成してきたため、一般にはなじみのない伝統的な言い回しが長く踏襲されてきた。裁判員制度に向け、冒頭陳述や論告は従来の「である」調から「ですます」調に変わりつつあるが、起訴状はそのままで、法廷で朗読されても傍聴人などには分かりにくいケースも多い。

 このため東京地検は、起訴状についても市民に分かる表現に改めようと独自に検討し、参考例をまとめた。既に第一線の検事に配布し、活用され始めた。具体的には、「所携の」を「持っていた」、「こもごも」を「それぞれ」、「畏怖(いふ)させる」を「怖がらせる」と言い換えるなどし、従来の起訴状にあった独特の堅さを一新した。

 東京地検の佐久間達哉総務部長は「起訴状では構成要件をコンパクトにまとめる発想があったため、決まった用語が使われてきた経緯がある。だが古い用語に縛られる必要はない」と話す。

 ただ、どんなに長い起訴状でも句点(まる)で区切らずに一つの文にまとめる「一文主義」は続いている。法務・検察幹部の中には「一文主義を見直すなどもっと改良の余地があるのでは」との声もあり、今後も試行錯誤が続きそうだ。【銭場裕司、安高晋】

 ◆東京地検がまとめた言い換えの例◆

手拳で殴打する→げんこつで殴る

足蹴にする  →足で蹴る

畏怖させる  →怖がらせる

看破する   →見破る

所携の    →持っていた

こもごも   →それぞれ

○○の名下に →○○の名目で

申しむけ   →言い

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