寄生虫の「トキソプラズマ」が哺乳類の体内で感染を広げる際に、自分でつくり出すホルモンが重要な役割を果たしていることを大阪大の永宗喜三郎助教らが突き止め、10日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
このホルモンをつくるのを妨げる薬剤をマウスに投与すると、増殖が抑えられることを確認。永宗助教は「人に応用できれば新たな治療薬開発につながる」としている。
トキソプラズマは猫を主な宿主とし、人に感染しても多くの場合、ほとんど症状は出ない。ただ妊婦では胎児に異常が出たり、抵抗力の弱い人は死ぬこともある。
永宗助教は米ワシントン大チームと、トキソプラズマがつくるホルモン「ABA」の働きを分析。宿主細胞内で寄生虫が増えてホルモン濃度が高まると、細胞外に放出されてほかの細胞に感染を広げることを突き止めた。
このホルモンはもともとは植物由来らしい。永宗助教は「進化過程で寄生虫の代謝機構に取り込まれたとみられる」と話している。
(共同)