運転免許証やパスポートと並び、身分証明に用いられる住民基本台帳カードが各地で偽造され、携帯電話や銀行口座の不正取得に悪用されたケースが2007年度、少なくとも16都府県で計50件に上ったことが、総務省の調査でわかった。
捜査関係者からは「偽造が容易」との指摘もあり、住基カードの信頼性が揺らぐ事態に、同省は緊急対策に乗り出した。
06年度に全国で7件の偽造カード使用が報告され、同省は昨年8月、本格的な調査を始めた。その結果、携帯電話会社や銀行の窓口で偽造カードが本人確認に使われたケースは大阪府の15件をはじめ、福岡県7件、奈良県6件など。同省は「確認されたのは氷山の一角」とみている。
全体の約7割は、携帯電話の契約のため、店側の担当者がカードをコピーする際に、「文字の書体や間隔が不ぞろい」などの不自然な点に気づき、自治体に問い合わせて偽造と判明した。
警察当局によると、カードすべてを偽造する手口のほか、正規のカードの氏名や顔写真を他人のものに改ざんする例も多い。偽造カードで不正取得された携帯電話や口座は、振り込め詐欺などの犯罪に悪用されたとみられている。
捜査関係者は「運転免許証に比べ、住基カードは保護シートが薄く、はがして偽造しやすい」と弱点を指摘する。総務省は、対策として、偽造カードを見分けるパソコンソフトを開発し、全国の金融機関に配布することなどを検討している。