食の「偽装」が相次ぐなか、一足早く販売を再開した北海道の土産菓子「白い恋人」が売れに売れている。22日で再開から1カ月を迎えるが、売れ行きは前年同期比の3倍。製造能力いっぱいの1日50万枚が連日完売し、開店30分で売り切れる店もあるほどだ。「あの白い恋人」という話題性に加え、「入手困難」のレア感も人気の理由のようだ。
「白い恋人」100人に聞きました
「白い恋人パーク」では連日、あっという間に「白い恋人」が完売する=21日午前9時11分、札幌市西区宮の沢で
「本日の予定数量を完売させていただきました」。北海道の観光・ビジネスの拠点、新千歳空港。「白い恋人」を扱う23店舗には午後に入ると、こんなボードが掲げられる。特に、製造元の石屋製菓に隣接するレジャーパーク「白い恋人パーク」(札幌市西区)は、毎日数百箱を用意するものの、午前9時の販売前に行列ができ、30分後には売り切れる。
新千歳空港で購入した100人に尋ねたところ、半数が「話題性があるから」と答えた。「いま、これを買って帰ったらウケる」「よく買えたね、と喜んでもらえる」。忘年会の景品用に職場で頼まれた出張客も多いという。
修学旅行生を引率する岡山県倉敷市の男性教諭(36)は「道内各地で売り切れていた。今日は目の前にあったので勢いで手を伸ばした」と苦笑した。
「白い恋人」の不正が発覚したのは今年8月。広範に賞味期限の改ざんなどを行っており、批判を浴びて約3カ月の販売停止に追い込まれた。
現在の生産能力は1日約50万枚で、以前より5万〜10万枚落ちている。外箱でなく個別包装の袋ごとに賞味期限を印字し、手間がかかるようになったためだという。生産ラインが詰まっているため、他の商品はまだ一切製造できていない。
消費社会に詳しい国際大学研究員の鈴木謙介さんは「消費者の反応はメディアが大きく取り上げた時に偏る。偽装を問題視するのも販売再開で購買に走るのも、一時的な現象ではないか。不正があった他の食品も、将来同じ現象が起こりうる」と指摘する。