整理回収機構は7日、債務者の不動産会社元社長と海外旅行に同行したとして、企業再生本部担当の常務執行役員(57)を厳重注意処分とした。常務は同日付で辞任したため、退職金を20%減額された。元社長は旅行直後に機構から債務免除を受けていたが、機構が設けた社外調査委員会は「債務免除に常務が影響を与えた証拠はない」と結論づけた。
調査委の報告書などによると、常務は99年から機構の顧問弁護士を務め、04年6月に現職に就任した。就任前の03年11月にネパール、就任後の04年9月に中国、05年9月にモロッコへ旅行した際、静岡県三島市の不動産会社(99年解散)の元社長が同行していたという。ツアーはいずれも知人の税理士が主催し、税理士が顧問を務める会社の経営者ら数人が参加した中に元社長がいたという。
旅行費用はそれぞれ一人あたり30万〜60万円で、常務は自分で払ったという。常務はほかに、03〜05年に十数回、ゴルフやパーティーで元社長と顔を合わせたことを認めているという。
不動産会社はバブル期に融資を受けた旧住宅金融専門会社(住専)関連の債務があり、元社長は約111億円の連帯保証債務があった。常務は元社長に対し、和解協議の代理人として機構に関係があった弁護士を起用するよう税理士を通じてアドバイスし、実際に05年春から、この弁護士が機構との交渉にあたっていたという。
元社長は、3度目の旅行直後の05年10月、4000万円の支払いを条件に機構から債務免除を受けた。機構は06年10月、不動産会社の債権も他の債権回収会社に売却した。
常務は機構に対し「会社に迷惑をかけた」と話しているという。機構は監督責任を問い、奥野善彦社長を減給1カ月(20%)、志田康雄社長代行を同(10%)とする処分をした。
この問題に関して、元社長が不動産会社とは別に設立した会社から報酬を得ていたのに、機構には「無職、無収入」と主張して債務免除を受けたのは強制執行妨害罪と詐欺罪にあたるとして、関係者が東京地検特捜部に告発している。
http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200712070309.html