ロックバンド、ハウンドドッグの大友康平(51)が、前事務所からコンサート出演義務違反による債務不履行などで3214万円の損害賠償を求められている民事訴訟の口頭弁論が5日、東京地裁で行われ、大友が証人として出廷した。大友は独立の経緯とメンバーと別れた理由を初めて明かし「同じように独立しようとして(前事務所に)振り回された尾崎豊さんの気持ちが分かった」と、切々と訴えた。
スーツ姿の大友は、初めてメンバーと別れた経緯を法廷で告白した。大友によると04年8月末、個人活動のための事務所を設立しようと前事務所に相談した。だが、福田信会長が「ハウンドドッグはお荷物だ。あと1年ぐらいしか給料は払えない」と言ったという。
大友は「これまで(事務所に)多大な貢献をしてきたつもり。でも福田会長から『独立は認めない。解散しろ。解散ツアーをすればメンバーに2000万円ずつ退職金が出せる』と言われたが、バンドは私の命で解散はできないと言った。福田会長から『メンバーを連れて行け』と言われ、収拾がつかなくなった」と明かした。
独立にあたり、大友はメンバーの蓑輪単志、鮫島秀樹を切った。その理由を「蓑輪は会長の秋の解散ツアー案に同意したため」。鮫島については「前事務所と密接な関係にあって情報が漏れ、信用できなかった」と明かした。
昨夏、残るメンバー3人を切った理由も「(新事務所設立から)1年間に限ってと考えていた」と弁明した。もっとも、前事務所の代理人から「あなたが、独立して個人活動のギャラを前事務所に入れなかったら、バンドを維持できないと分かっていたのではないか」と問われると大友は言葉に詰まり、「それは会社の問題」「今まで貢献してきた」と話すにとどまった。傍聴席にいた元メンバーの橋本章司、八島順一は寂しそうに笑った。
前事務所が訴えている、05年7月9日以降のコンサート16本をキャンセルしたことについては「正式には決まっていなかった」。また、前事務所を通さずに企業イベントに参加したことについても「社長は了承していたと認識している」と反論した。前事務所から提訴されたことを報道で知ったと明かし「私もメンバーも会長に振り回され、同じように独立した尾崎豊さんの気持ちが分かりました」。尾崎が独立した際も同事務所ともめたことを引き合いに出した。
一方、前事務所の佐藤庄平氏は「こちらから解散を求めたことはない。事実上、05年4月は、大友が独立問題を真剣に考えていないメンバーに怒り、事実上の解散状態にあった。その中での解散プロジェクトであった」と主張。同代理人は「大友氏は(キャンセルしたイベントの告知を)ラジオで言っている」「05年1月の時点で全国ツアーをやることを把握していた」と主張した。
双方とも主張を譲らず、判決は司法の手に委ねられるが、ハウンドドッグは既に元通りには戻れないことを示していた。