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2007年12月05日(水) 17時55分

フランス人「日本熱」 来日者数10年で倍 漫画で関心朝日新聞

 日本の漫画やアニメが根強い人気を持つフランスから、日本にやってくる人が増えている。「漫画を原文で読みたい」と日本語を学ぶ留学生、アニメゆかりの場所を巡るフランス人向けツアー。漫画を入り口に、日本文化に関心をもつ若者も少なくない。

漫画が留学などのきっかけになったエチエンヌさん(左)とブラサクさん=東京都世田谷区の駒沢大学で

 「大きな森に神木、鳥居。景色が漫画の背景と一緒で感動した」。駒沢大学に留学しているガエル・ブラサクさん(22)は、「日本の原風景」を求めて訪れた長野でそう感じたという。「漫画を原文で読みたい」と、大学入学と同時に日本語を学び始めた。やがて芥川龍之介や太宰治と、興味は文学にも広がった。

 東京でインターンをする大学院生、ジュリアン・エチエンヌさん(24)が一番好きな作品は、侍文化を描く「るろうに剣心」。「もう刀は持っていないだろうが、その精神は日本にまだ残っているのでは」と考えた。

 京都外国語大留学生のカリーン・パルマさん(21)は漫画の翻訳家を目指す。「語学上達はもちろん、漫画でみた日本の生活を感じたかった」

 フランス人の日本の大学などへの留学生は、06年で417人(文部科学省調べ)にとどまるが、「予備軍」は急増中だ。フランスでの日本語学習者は、06年には1万5534人(国際交流基金調べ)と84〜85年の約5倍。ヨーロッパ諸国では最も多い。近藤安月子(あつこ)・東大教授らが日本語を学ぶ動機などを尋ねた05年の調査では、「漫画・アニメ」が最多の30%で、専攻学生の8割が留学を希望していた。

 漫画は旅行者数にも影響しているようだ。06年のフランス人の来日者数はここ10年でほぼ倍増の12万1310人。フランス人向けに、秋葉原や宮崎駿監督が館主を務める「三鷹の森ジブリ美術館」、コスプレイベントなどを巡るツアーを企画する会社も登場した。

 フランスで日本アニメの放映が本格的に始まったのは80年代後半。91年には「ドラゴンボール」が出版された。これらで育った世代が成人になりつつあることが背景にある。京都精華大マンガ学部の牧野圭一学部長は「日本の漫画は政治から歴史、囲碁など幅広い対象を扱い、日本文化のカタログの役割を果たしている。19世紀、浮世絵を通じて日本に関心を持ったことに似ている。新しいジャポニスムですね」と話している。

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