記事登録
2007年12月04日(火) 08時00分

国民生活センター 波紋呼ぶ縮小計画産経新聞

 ■偽装や詐欺多発…疑問の声も

 消費者相談の総本山、国民生活センターの縮小計画が波紋を広げている。独立行政法人の整理合理化計画の一環として、所管する内閣府が9月に提出した見直し案に、直接相談の廃止と、商品テストの大幅な外部化を盛りこんだためだ。政府は年内の閣議決定を目指しているが、国民生活に直接かかわる組織だけに、消費者団体や弁護士会をはじめ、自民党からも「縮小反対」の声が上がっている。(村島有紀)

 国民生活センターには相談調査部、商品テスト部、教育研修部など7部4課5室1館があり、114人の職員が約35億円の年間予算で、全国の消費生活センターが受け付ける年間約110万件の消費生活相談をネットワーク(PIO−NET)を通じて収集し、消費生活データベースとして公開するほか、実際に商品の欠陥の有無を調べるなどしている。

 昭和45年に特殊法人として発足し、平成15年に独立行政法人に。職員の待遇は国家公務員に準じ、平均給与は42・9歳で825万円。4人の理事のうち、国民生活センターからの生え抜きは1人だけで、理事長を含めて2人は内閣府などからの天下り組だ。

 センターを所管する内閣府は、死亡・重篤事故の情報からヒヤリハット情報まで幅広い情報を入力できる「事故情報データバンク」の構築、消費者紛争発生時の円滑な解決のために裁判外紛争解決(ADR)機関の整備という業務拡大案とともに、直接相談の廃止、商品テスト内容の大幅な外部委託という縮小案を含んだ整理合理化計画を行政改革相に提出。行政改革本部は現在、インターネット(www.gyoukaku.go.jp/pub/ikenbosyu)で意見を募集している。

                   ◇

 これに対し、食品の偽装表示や耐震偽装、子供の生命・安全を脅かす商品、高齢者をねらった詐欺的商法が広域化・多角化し、生活の安全に関心が高まるなかで、国民生活センターを独立行政法人のひとつとして一律に縮小対象にしていいものかという疑問がある。

 実際、地方自治体は財政難で消費者行政を縮小し、商品テストを行える自治体が少なくなっている。国民生活センターでは、商品テスト部21人で、月に1度の問題提起型テスト、年間約50件の原因究明テストを行っているが、年間100件ある地方自治体などからのテスト要望には半分しか応じきれていないのが現状だ。

 また直接相談については、5人が年約4000件を担当しているが、国民生活センターの田口義明理事は「直接相談は現場で何が起こっているかを知るアンテナの役割。大学の医学部が大学病院をもって研究にあたるようなものです」と必要性を強調する。

                   ◇

 行革の視点からは既定路線とみられていた業務縮小だが、福田康夫首相が国会で10月1日、「悪徳商法の根絶」と「消費者保護のための行政機能の強化に取り組む」と所信表明したことから風向きが変わってきた。

 日本弁護士連合会は10月末、「国民生活センターの機能・権限の強化を求める意見書」を公表。「現時点でも、限られた予算と人員のなかで、果たすべき役割を十分になっていない」として、消費者庁の設立の必要性にふれつつ、当面の国民生活センターの機能拡大を求めた。また、日本生協連なども「他の独立行政法人と一律の整理合理化をすべきではない」とする意見を行革本部に送付した。

 自民党も11月30日、政務調査会に消費者問題調査会(会長・野田聖子衆院議員)を設置。各省庁がそれぞれ行っている安全対策の窓口をひとつに集約するワンストップサービスの必要性を指摘し、「国民生活センターの機能を今以上に伸ばしていきたい」(同調査会事務局長の後藤田正純衆院議員)と、働きかけを行うという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000107-san-soci