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2007年11月24日(土) 00時00分

競輪用自転車、ヤフオクに 公道での走行は想定外朝日新聞

 前輪部で破損事故が相次ぎ、レースでの使用を禁じられた競輪用自転車が、インターネットオークションに相次いで出品されている。事故車両は多くの競輪選手が使用していたトップブランド品で、選手らが手放した中古品が出回っているとみられる。ネット上で引く手あまたの人気だが、日本自転車振興会(東京)は「公道で走ることを想定しておらず、大きな事故につながる恐れもある」と注意を呼びかけている。

レースでの使用が禁止された競輪用自転車「ビバロ」(日本自転車振興会提供) 2度の破損事故でレースへの使用が禁止されたビバロの前輪のフレーム。中央近くの銀色の部分が破損した

 出品されているのは、「サイクルワークショップクサカ」(神戸市西区)が78年から生産している「ビバロ」。静岡県内の競輪場で8月にあったプロのレースで、前輪部を固定する「フォーク」と呼ばれる部品の接合部分が折れる事故が2件相次ぎ、選手が脱臼などのけがを負った。

 その後、接合部分の溶接不良が判明し、選手や競技自転車の登録を受ける日本自転車振興会は9月5日、ビバロの使用を禁じ、10月16日には自転車登録を抹消した。全プロ選手の6分の1にあたる約600人が使用していたという。

 その一方で、ネットオークションの最大手「ヤフーオークション」などには、ビバロが相次いで出品されている。価格は数万〜十数万円で「新品美品」と銘打ち、定価とほぼ同額で売られているケースもある。使用禁止後に出品が増えたことから、日本サイクリング協会(東京)は「レースで使えなくなったビバロを選手が売ろうとした可能性もある」とみる。

 ただ、同振興会によると、仮に選手がビバロを出品していたことが確認できたとしても、処分はできないという。広報課の担当者は「あくまでも選手の持ち物の売買なので、そこまでの権限はない」と話す。

 ネットオークションには、ビバロ以外にも数種類の競輪用自転車が出品されている。近年、米国に端を発した競輪用自転車の「街乗り」が流行。国内でもファッション雑誌などで取り上げられ、一昨年ごろから若者を中心に人気が広がった。

 競輪用自転車はブレーキがなく、道路交通法上は一般道路を走れない。高速走行でハンドル操作が安定するように作られていることから、街中を低速で走るには不向きとされる。さらに、車体に軽量化したパイプを使っているため、耐用年数が短く、破損の危険があるという。

 ネット上に出品されたビバロにもブレーキがついておらず、利用者の多くは、自転車ショップでブレーキをつけるなどして乗っているとみられる。同振興会は「一般道は段差が多く、ビバロのフォークが破損する可能性も否定できない」とし、国民生活センターの担当者も「事故が起こったら、運転者が安全運転義務違反に問われる可能性が高い」と話す。

 クサカの日下周一代表は「一般道での乗車は避けてほしい」と呼びかけており、製造5年以内なら無償でフォーク部分の付け替えに応じている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200711240036.html