大学の夜学のともしびが急速に消えている。すでに廃止した私立大が多いが、国立大でもこの数年で募集を停止する動きが目立つ。働きながら学ぶ「苦学生」が減って夜学に通う学生の1割に満たない事情や、04年度の法人化で大学が厳しい経営努力を迫られていることが背景にある。
大阪大外国語学部の夜間主コースで学ぶ学生。有職者の割合は年々減ってきたという=大阪府箕面市で来年度の夜学の募集をやめたのが大阪大外国語学部(旧大阪外国語大)、神戸大経済学部、千葉大工学部(都市環境システム学科)など。和歌山大経済学部、横浜国立大工学部、岐阜大工学部などはすでに募集をやめ、今春から入学者がいない。
名古屋工業大工学部の第二部は、来春の入学生の募集定員を、今年度の140人から20人に一気に減らす。
ある国立大の幹部は「志願者数を考えれば夜学を廃止し、昼間部にその人数を割り振る方が経営の負担がグッと減る」と、募集停止に踏み切った背景を語る。
文部科学省などによると、今年度で夜学があるのは国立26、公立5、私立35の計66大学。5年前には私立66を含めて計103大学に夜学があった。
国立大は90年代になって相次いで二部から「夜間主コース」にして、昼の授業も受けられるように改めたが、志願者の減少に歯止めがかからない。大阪大外国語学部も旧大阪外大時代の93年度に二部から夜間主コースに変え、社会人枠(定員72人)を設けた。しかし、志願者の減少は著しく、翌年度に約200人いた志願者は07年度に約40人にまで減った。
同大学が夜間主の入学者にアンケートすると、有職者は1割弱だった。07年度から募集をやめた和歌山大経済学部も、学生64人のうち仕事をしていたのは4人だけだった。
大阪大外国語学部の南田みどり・副学部長は「勤労学生がめっきり減り、勤労学生を支えるという目的が薄れ、夜学を見直す時期にきていた」と話す。
同コースの最後の学生になった木村愛(まな)さん(23)はこの春、短大を卒業し、働きながら中学、高校の教員免許をとり、英語教師になろうと入学した。「仕事をしている人が学べる場をなくすのはもったいない。授業時間の面でも、学費の面でも、私はこのコースがあって助かった」と残念がる。
私立大の夜学では04年度以降、関西大法・経済・商学部、早稲田大第二文学部、立命館大法・産業社会・文・経済・経営学部などが募集をやめ、同志社大政策学部は来春の新規募集をしない。