文部科学省は二十日、子どものいじめの新たな温床と指摘されているインターネットの利用実態について全国調査する方針を決めた。年度内に結果を取りまとめ、学校関係者やインターネットの事業者などの協力を得て、「ネットいじめ」の解決策を探る材料とする。
ネット上のいじめについては、「学校裏サイト」と呼ばれる掲示板での子ども同士の中傷などがあるが、大人など外部からは見えにくいため、解決が遅れることなどが問題点とされている。いじめられた側にとっても、匿名性の高いメールなどでは、誰がいじめたのか分からないことで、人間不信など心の傷が深くなると指摘されている。
同省は二〇〇六年度の小中高校のいじめの調査で初めて「パソコンや携帯電話などで、誹謗(ひぼう)中傷や嫌なことをされる」との項目を追加。生徒の顔写真とアダルト画像の合成写真がネット上に出回るなど、約四千九百件が学校側から報告された。
同省は、ネット上の掲示板の中から抽出して実態を調査する方針で、最終的な詰めに入っている。「実態を把握することで、事業者にしてほしいことなどが明確になる」(青少年課)としている。
文部科学省が、実態調査を試みるネット上のいじめの世界。学校が把握している件数だけでも、全国で五千件近い。これは氷山の一角でしかないとみられている。学校現場からは「つらい思いをしている子どもを救えるかの、瀬戸際に立っている」との切実な声も聞こえる。
「なぜ、インターネットが使える携帯を子どもが持つことを社会が許しているのか」。二十日、子どもがインターネットを安全に利用できる対策を話し合うため、同省が設けた有識者らの会議の席上。都内の中学校長は根本的な問いを投げかけ、学校側の苦悩の深さをのぞかせた。
この校長の学校では最近も、保護者から「子どもがネット上で中傷された」との相談が寄せられた。学校では最初、その掲示板を探すことができず、中傷の内容が確認できなかった。「学校には知らせない」という約束で保護者が生徒から聞き出した話だったためだ。保護者を通じてあらためて聞き出したアドレスとパスワードで掲示板にたどりついたときには、書き込みは削除された後だった。書き込んだのが誰かは特定できないままだ。
有害情報対策として、携帯電話からのサイト閲覧を規制するフィルタリング機能は広がりつつある。しかし、子ども同士のやりとりまで規制できるわけではない。「闇の中だ」とこの校長は嘆息する。
会議の委員でインターネット事情に詳しい千葉大学の藤川大祐准教授は「子どもが使う掲示板でも、事業者がネット上の争いを監視しているサイトもあれば、野放しのサイトもある。事業者の取り組みを促していくとともに、学校での情報教育を深めていくことが必要だ」と話している。
(東京新聞)