和菓子メーカー赤福(三重県伊勢市)に営業禁止命令を出している三重県は20日、店頭売れ残り品を包装し直して再出荷する「まき直し」や、消費期限を先延ばしする「先付け」などの食品衛生法違反の偽装が、本社工場生産分だけで今年8月までの2年間に41万箱に上ったことを明らかにした。組織ぐるみの行為とみている。県は同日、同社の浜田典保社長を伊勢保健所に呼び、12月14日までに表示の改善などをまとめた報告書を提出するよう指示した。
県がまとめた調査報告書によると、05年10月〜07年8月に本社工場で生産された約1830万箱のうち、同法違反の「先付け」は約32万箱、店頭売れ残りの生製品の「まき直し」は約2300箱、同じく冷解凍した製品のまき直しは約9万4千箱で、合計41万箱だった。
さらに、冷解凍工程を経て出荷された商品のうち、店頭売れ残り品の再出荷分が05年10月〜06年9月は27.7%、同年10月〜07年1月は28.2%に及ぶと推計。同社内では、消費期限を2日間過ぎたものまで再使用することを基準にしており、回収品から再使用する「むきあん」「むき餅」はほぼすべてが消費期限切れだったと県はみている。
また、赤福餅の生産量に対する廃棄率が2%台と極めて低いことがわかり、県健康福祉部の庄司正総括室長は「廃棄率を減らすため、会社として完璧(かんぺき)な仕組みができている」とし、一連の偽装について「組織ぐるみと判断せざるを得ない」と述べた。
県は赤福が違法行為を繰り返した要因について、(1)法令順守の意識の欠如(2)強すぎる営業優先の姿勢(3)行きすぎた効率性の追求、などの点を挙げた。特に浜田社長の父益嗣(ますたね)氏が社長だった73年ごろに導入した冷解凍設備について、県は「根拠のない消費期限を表示するなどの違反を誘引した」と指摘した。
県は浜田社長に、(1)食品にかかわるすべての法令順守、社内体制の確立(2)食品の適正表示の担保(3)営業施設の衛生管理、教育訓練、運搬、販売、表示の総点検と改善などを指示した。
赤福は今後、県の指示に沿って伊勢保健所に報告書を提出。それを受けて県は、同社が報告書通りに改善策や再発防止策を実施しているかを見極め、営業禁止処分の解除を検討する。定期検査などで不正を見抜けなかったことを踏まえ、改善策などについて入念に点検する構えだ。
赤福は食品の表示などを定めた日本農林規格(JAS)法に基づいて、赤福餅の冷解凍工程を廃止し、売れ残り品をすべて廃棄するとした改善報告書を、今月12日に農林水産省東海農政局に提出している。
http://www.asahi.com/national/update/1120/NGY200711200009.html